金融政策の罪と罰(6)
2020年3月19日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日経平均株価は日中1万6358円まで下落した。その10日ほど前、日本銀行の黒田東彦総裁は、日銀の保有する株価指数連動型投資信託(ETF)の損益分岐点が1万9500円程度であることを明らかにしていた。保有残高約29兆円のETFに、4兆~5兆円の含み損が生じていた計算になる。
19年9月末時点の日銀の資本勘定は、3.3兆円だった。このほかに債券取引損失引当金などの引当金が計6.0兆円あったが、使途が限定されている。一般の企業会計に近い考えをとれば、引当金は「自己資本」に含めないのが適当だろう。期中の収益を加味しても、自己資本と含み損は同額に近く、実質債務超過に近い状態にあったようにみえる。
その後、株価が急反発したために実質債務超過のおそれはなくなったが、ETFという価格変動の大きい資産を大量に買い込んだために、通常の中央銀行では起こりえない事態が生じたということである。
利上げ時に巨額損失?
ETFだけではない。日銀が保有する約530兆円の国債も、深刻なリスクを抱えている。将来日銀の期待どおりに物価が上昇し、金利引き上げの必要が出てくれば、保有国債の市場価格は下落し、巨額の損失が発生する。その額は、資本勘定と債券取引等損失引当金の合計を上回る可能性がある。
損失は当初の段階では含み損であるが、次第に実現損に変わる。もし短期間のうちに物価と金利が上昇すれば、実際に債務超過に陥る可能性が高まる。
こうした可能性に関して、「日銀は一般企業と違うので心配不要」との主張があり、その論拠は二つほどあげられるが、間違いだ。
債務超過でどんな事態が?
一つめの論拠は、「日銀はみずから資金を創出できるので、一般企業のように資金繰り倒産はしない。債務超過になっても問題はない」というものだ。資金繰り倒産をしないのは事実だ。しかし、内外の投資家が注目するのは、資金繰り倒産の可能性でなく、債務超過による日銀の信用力への影響である。
日銀は銀行券や当座預金の提供を通じて、国民に「通貨」を供給している。もし日銀が債務超過に陥れば、通貨…
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