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伊集院静「ミチクサ先生」が描く“等身大の夏目漱石”

重里徹也・文芸評論家、聖徳大特任教授
作家の伊集院静さん=東京都千代田区で2021年3月30日、丸山博撮影
作家の伊集院静さん=東京都千代田区で2021年3月30日、丸山博撮影

 私たちが夏目漱石の小説に感じる独特な品格とは何なのだろう。日本の近代小説を読めば読むほど、別格の作家として、漱石を意識するようになる。作品が面白いのはもちろんだが、読んでいるうちに、そこを流れる時間を共有して、登場人物と一緒に悩んだり、考えたりしてしまうといえばいいだろうか。

 伊集院静の長編小説「ミチクサ先生」(上・下、講談社)は漱石の生涯を独特な視点から描いた評伝小説だ。生身の漱石の姿が生き生きと描かれている。

ヒット曲「愚か者」の作詞も

 伊集院は1950年、山口県生まれ。立教大の野球部に所属し、練習に明け暮れたが、右ひじをいためて退部した。父親との間に確執があり、仕送りを止められ、30種を超えるアルバイトを経験したという。卒業後は広告代理店勤務を経て、CMディレクターやコンサートツアーの演出を手がけた。近藤真彦が歌ってヒットした「愚か者」や「ギンギラギンにさりげなく」などの作詞をしたことでも知られる。

 81年に小説家デビュー。92年に「受け月」で直木賞受賞。その後も盛んな執筆活動を続けている。現在は直木賞選考委員を務める文壇の重鎮だ。一方で、競輪やマージャンなどのギャンブルに詳しく、ゴルフや美術鑑賞など趣味も幅広い。大人の遊び方や豊かな人生の指南役として、エッセーも人気を集めている。

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文芸評論家、聖徳大特任教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年聖徳大教授。23年4月から特任教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。