私たちが夏目漱石の小説に感じる独特な品格とは何なのだろう。日本の近代小説を読めば読むほど、別格の作家として、漱石を意識するようになる。作品が面白いのはもちろんだが、読んでいるうちに、そこを流れる時間を共有して、登場人物と一緒に悩んだり、考えたりしてしまうといえばいいだろうか。
伊集院静の長編小説「ミチクサ先生」(上・下、講談社)は漱石の生涯を独特な視点から描いた評伝小説だ。生身の漱石の姿が生き生きと描かれている。
ヒット曲「愚か者」の作詞も
伊集院は1950年、山口県生まれ。立教大の野球部に所属し、練習に明け暮れたが、右ひじをいためて退部した。父親との間に確執があり、仕送りを止められ、30種を超えるアルバイトを経験したという。卒業後は広告代理店勤務を経て、CMディレクターやコンサートツアーの演出を手がけた。近藤真彦が歌ってヒットした「愚か者」や「ギンギラギンにさりげなく」などの作詞をしたことでも知られる。
81年に小説家デビュー。92年に「受け月」で直木賞受賞。その後も盛んな執筆活動を続けている。現在は直木賞選考委員を務める文壇の重鎮だ。一方で、競輪やマージャンなどのギャンブルに詳しく、ゴルフや美術鑑賞など趣味も幅広い。大人の遊び方や豊かな人生の指南役として、エッセーも人気を集めている。
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