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36歳責任者「気難しい年配職人」から協力を得た一手

井寄奈美・特定社会保険労務士
 
 

 大手メーカーに勤めるA輔さん(36)は昨春、地方にある子会社に出向し、機械部品製造工場の管理責任者に就きました。工場の業務改善を命じられていますが、業務が属人化していることがネックとなり、思うようにはかどらず、戸惑っています。

マニュアル整備が必須だが

 A輔さんは本社で働き方改革のための業務改善プロジェクトに携わり、一定の成果を上げました。その手腕を見込まれての出向でした。工場で働くのはベテラン職人や主婦パート、外国人技能実習生を含めて60人ほどです。

 工場では職人の高齢化が進んでいます。若い人材を採用するにも工場のある地方ではなかなか人が集まりません。10年ほど前から外国人技能実習生を受け入れ始めました。実習生や経験の浅い従業員や主婦パートでも安全で効率よく作業ができるよう、作業マニュアルとチェックリストの整備が必須の状況でした。

 工場は自動化やIT化を進めており、多くの業務を機械化していますが、一部に人の手が必要な工程が残っています。特に勤続35年で嘱託社員のB郎さん(63)の担当業務は、職人の技能と勘に頼る部分が多く、ブラックボックス化していました。

非協力的なベテラン職人

 A輔さんの前任者は、B郎さんに何度も担当業務の作業マニュアル作成を促していましたが、協力を得られませんでした。また、工場の各部門は、作業前の安全確認チェックリストを作成していますが、B郎さんの担当業務では、いまだに手つかずです。

 その点をA輔さんが現場で指摘すると、B郎さんは「マニュアルやチェックリストをいちいち見なくても、自分の頭の中に入ってますから」と言います。これまで一度もけがをせずに35…

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特定社会保険労務士

 大阪市出身。2023年、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。法学博士(大阪大学2026年)。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書(共著)に『労働事件予防の実務』(第一法規)など。http://www.sr-iyori.com/