Tさん(84)は、駐車場と賃貸マンションを経営する不動産業を営んでいる。今は亡き父親が30年前に相続対策で行ったマンション投資がバブル崩壊で大失敗し、その「負の遺産」を引き継いで、借入金返済に苦しんできた。自分の相続が視野に入った今、それに終止符を打とうと考えている。
バブル時代の相続対策
Tさんの父親は、明治期に創業した老舗メーカーの経営者だったが、高度成長期に新商品開発に乗り遅れ、業績が悪化したことから廃業した。自宅敷地に隣接する工場、倉庫、事務所など事業用の建物を全て取り壊し、賃貸駐車場を経営する不動産業に事業転換した。
その後、1985年ごろから地価が急騰し、相続税評価額の基礎となる路線価が毎年上昇するようになると、父親の相続対策が大きな課題になった。
路線価が上昇すると、自宅敷地の評価額や会社の株式評価額が上がり、そのため相続税の税率も上がるという「ダブル効果」をもたらす。89年の路線価は85年の6倍になり、相続税は最高税率の70%に達した。
父親は「自宅敷地を売れば納税はできるし、会社が残れば生活はできる」と考えていたが、業者から相続対策の提案があると、それに乗り気になった。提案では、自宅敷地にマンションを建設すれば、土地を手放さずに節税対策になり、賃料収入も見込めるという。「地価が高騰しているのだから、土地を手放してしまうと二度と買い戻すことはできなくなる」という業者の言葉は、父親の心をつかんだようだった。
こうして、話が具体化し、父親は自宅敷地に7階建ての賃貸マンションを建設することにした。収支計画書では、銀行から金利8%で建築資金の融資を受けるが、マンショ…
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