「あなたがこれから問われる罪、それは『傲慢罪』よ!」。元朝日新聞政治部記者の鮫島浩氏が近著「朝日新聞政治部」(講談社)で妻からこう言われたことを明かしている。
鮫島氏は1994年に入社し、政治部記者、同デスクを経て調査報道を担当する特別報道部のデスクとなった。2014年、東京電力福島第1原発の吉田昌郎所長(当時)の調書を巡るスクープが「捏造(ねつぞう)」と批判され、デスクを解任された。その後退社し、現在はウェブメディアを主宰している。
デスク解任当時、朝日新聞は吉田調書問題のほか、過去の慰安婦報道を誤報と認めたこと、それを遅すぎたと指摘した池上彰氏コラムの掲載を拒否したことを合わせた「3点セット」で、社会から猛烈なバッシングにさらされた。
鮫島氏は妻の言葉に「読者と向き合うことから遠ざかり、組織を守ること、自身の栄達を優先するようになっていたのでは」と反省。そして、「新聞界のリーダーを気取ってきた朝日新聞もまた『傲慢罪』に問われているのだ」と同著で続けている。
抜けきらない「本流意識」
「朝日新聞の経営や編集を長く牛耳ってきた政治部の実像」が同著のテーマだ。鮫島氏は「日本の報道界を支えてきた新聞記者の実像」を明らかにし、ジャーナリズム再建の道筋を考える題材を提供したいという。
毎日新聞の政治部で仕事をした私からすると、朝日新聞の記者は「本流意識」が強い。我こそは、新聞界の「雄」というわけだ。だから「日本の報道界を支えてきた」などとさらりと書けるのだろう。退社後も抜けきらない「本流意識」を感じてしまった。
読後、気づいた。本に登場する朝日新聞の主要プレーヤー、指導的地位にある人が全員男性なのだ。その徹底した男社会ぶりが「傲慢」を招き、「役所以上に内向きで足を引っ張り合う」体質を育て、世間から背を向けられたのではないか。
ロンドン大教授の研究
男社会の弊害を考えていたときに、面白い考察を見つけた。米ハーバード大学の経営大学院が出している「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」という雑誌がある。その日本語版21年10月号に、ロンドン大ビジネススクールのバーバラ・カーズ教授らの研究が載っている。
カーズ教授らは、08年の世界金融危機後の欧州大手銀行取締役の多様性…
この記事は有料記事です。
残り602文字(全文1548文字)







