Gさんが75歳で亡くなったとき、その最期をみとったのは、30年連れ添ってきたY子さんだった。二人は仲むつまじく、夫婦だと思っていた人が身内のなかにも多かったぐらいだが、実は婚姻関係はなく、Y子さんは「内縁の妻」だった。
亡くなる1年前に遺言書
何かの予感があったのだろうか。亡くなる1年前、Gさんは自筆証書遺言を作成していた。そこには簡潔に「すべての財産を内縁の妻Y子に遺贈する」とあった。
相続財産は、自宅のマンション1戸と事業に使っていた土地建物と現預金。さらに、土地建物を購入した時の銀行借入金が債務として残っていた。
Gさんに子はない。きょうだいは妹だけだが、すでに亡くなっていたため、妹の娘2人が代襲相続人となった。だが、兄弟姉妹やその代襲相続人には遺留分(最低限保証されている遺産取得割合)がないため、遺言書通り、Y子さんが全財産を取得することになった。
Gさんが遺言書を残したのは、Y子さんへの30年間の感謝の思いと、今後の生活を考えてのことだろう。その気持ちを形にした素晴らしい対応だったと思う。
ただし、税務に携わる税理士の立場としては、ひとつの疑問が残った。Y子さんに全財産を遺贈することを決断するくらいなら、なぜ婚姻関係を結ばなかったのだろうか、という疑問だ。
相続税制「配偶者に手厚い特例」
婚姻関係になくても、夫婦同然の生活を営む「内縁関係(事実婚)」であれば、法律上は「婚姻(法律婚)」に近い形で扱われる。例えば「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」という民法上の同居義務や扶養義務は認められ、内縁解消時には財産分与の請求もできると考えられている。
だが、税制上、事実婚には法律婚同等の権利は保障されない。税制では、配偶者を保護する特例規定が…
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