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甘くない「退職後の独立開業」61歳男性が知った現実

井寄奈美・特定社会保険労務士
 
 

 Aさん(61)は会社員時代に一念発起し、社会保険労務士(社労士)の資格を取得しました。60歳直前で会社を早期退職し、現在は社労士として前職の会社と委任契約を結び、業務の一部を受託しています。ところが、個人事業主として予想したほど収入は増えませんでした。

 定年後は再雇用で会社に残る選択肢もありましたが、定年前に家族とも相談し、会社とも話し合いをした上での決断でした。資格を取得し、独立開業した自身の選択がよかったのかどうか、今更ながら思い悩んでいます。

在職中に国家資格を取得

 Aさんは新卒で入社した会社の総務部で30年以上働きました。55歳で役職定年を迎えた後、国家資格である社労士の資格取得を目指して勉強を始めました。定年までに資格をとっておけば、定年後に給料が下がる今の会社で働き続けなくとも、転職したり、独立開業したり、人生の選択肢が広がると考えたからです。

 社労士は企業の労働保険・社会保険の手続きや就業規則の作成、社員の年金の相談など、会社の総務部の業務を代行する仕事です。試験科目は労働基準法など、これまで従事してきた総務の業務に関連するものが多く、国家資格の中で会社員が取得を目指す資格の一つです。

 Aさんは独学で勉強して3年目に試験に合格しました。会社にも報告しましたが、資格取得に対する報奨金や、資格手当の制度はありませんでした。

 Aさんは「社会保険労務士」を名乗って仕事がしたいと考えていましたが、そのためには社労士会への登録・入会が必要でした。登録・入会には費用がかかり、入会後は年会費の負担もあります。

 Aさんは悩みました。登録・入会しても会社は副業を禁止しており、会社にいる間は個人で社労士として仕事をすることはできません。そこで登録・入会は退職後、実際に社労士として仕事を始める時点で行うことにしました。

早期退職で会社とは委任契約

 Aさんが60歳の定年を迎える前、上司との面談がありました。定年後…

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