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「90年代はどん底」札幌の小さなスーパーが復活した理由

櫻田弘文・クエストリー代表取締役
札幌市郊外にあるスーパーマーケット「フーズバラエティすぎはら」
札幌市郊外にあるスーパーマーケット「フーズバラエティすぎはら」

札幌の小さなスーパーの戦い(下)

 札幌市郊外にある「フーズバラエティすぎはら」は、わずか100坪(330平方メートル)の小規模店舗ながら、激しい競争と業界再編の荒波を生き抜いた独立系スーパーマーケットだ。前回に引き続き、3代目経営者の杉原俊明さん(58)にその生存戦略を聞く。

90年代はどん底の時代

 1980年代、同店は大型スーパーやコンビニエンスストアとの激しい競争にさらされていた。さらに91年の大店法改正でスーパーが急速に増え、同店の経営はジリ貧になる一方。そんな中、わらにもすがる思いで取り組んだのが、品ぞろえを当時の大手スーパーのような「全国の売れ筋」にすることだ。分析に基づいての方針転換だったが、これがかえって客からの不評を招いてしまった。

 象徴的なのが地元メーカーのそばつゆを品ぞろえから外したことだ。「これが全国で支持されている商品です」と説明しても、客からは「私はあれじゃなきゃダメなの」という返事が返ってくる。

 「今思えば、この辺りは戸建ての住宅が並び、札幌でも特別なエリアです。当時は転勤族も増えていたとはいえ、昔から住んでいる人が多い。地域性を無視するなど言語道断だったのです」

 さらに同じころ、業界の関係者からは「やっぱり小さな売り場面積では成長できない」などと言われており、杉原さんは「どうせ潰れるなら、もう自分の好きなようにしよう」と腹をくくった。

復活の始まりは1丁500円の豆腐

 そんな折、一人の男性が店を訪ねて来てこう言った。

 「インターネットで買い物ができる店をやってみませんか」

 2003年の春ごろのことだ。当時は本などのネット販売は伸びていたが、食料品をネットで販売する企業や店はまだ少なかった。

 男性は「この店のファンなんです。でもやっていることは古臭く感じます。出来高払いでいいので店の商品をネットで売ってみたい」と熱心に語った。

 この男性が現在、同店のウェブマスターを務める佐藤伸行さんだ。佐藤さんは百貨店や問屋で働いていたが、いずれも会社の業績悪化に伴い退職。ネットやITの知識は独学だったものの「好きなことをやろう」と店を訪問してきたのだ。

 腹をくくったものの先が見えなかった杉原さんはその熱意を受け入れ、「よくわからないけど、やってみよう」と03年9月、ネットスーパーを立ち上げた。だが当初は店の認知度も低く、すぐに結果は出なかった。

 さらなる模索が続く中、佐藤さんが新たな提案をした。

 「おいしい豆腐を売りたいので、僕の好きな豆腐店に話をつけて…

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クエストリー代表取締役

1955年山梨県生まれ。日本大学卒業後、78年に販売促進の企画・制作会社に入社。2001年、クエストリーを設立して独立。中小企業経営者向けの「クエストリー・ブランディングクラブ」を主宰する他、数多くの専門店や飲食店のブランディングを実践的に指導している。