A輔さん(36)は従業員約500人の会社の総務部の係長です。社員の社会保険の手続きや給与計算などが業務です。同社には直営店舗や物流倉庫があり、パート社員を多く抱えています。入退社の手続きが頻繁に起きる中、業務にミスがあっても自分が悪いとは考えない年上の部下にA輔さんは悩んでいます。
それは数カ月前に中途採用で契約社員として入社したB子さん(52)です。B子さんは他社で総務担当の経験が長く、即戦力として入社しました。A輔さんは、年上の部下を持つのは初めてで、正直抵抗がありましたが、業務経験が長い方がよいという上司の判断でした。
B子さんはきちょうめんな性格で、机の上も整理整頓されており、仕事を指示すると、すべてメモにとっていました。業務ソフトの操作に慣れるのに少し時間がかかりましたが、人事情報の登録や入退社の手続きなどルーティンワークができるようになりました。
「時間がいくらあっても足りない」
ただし、B子さんは自分の思い込みで業務を進めてしまう傾向がありました。同社でパート社員は直営店舗や物流倉庫で直接採用していることから、総務部に渡す従業員の情報が完全でない場合もあります。
それでも、B子さんは「現場こそ正しい情報を総務部に渡す意識を持つべきです。私はその前提で業務を進めています。いちいち私が確認していたら時間がいくらあっても足りません」と言い、不備を確認しないまま、人事情報の登録や社会保険の手続きを完了させてしまうことがありました。
ある時、店舗で新規採用したパート社員の通勤手当の支給漏れが見つかりました。店舗から総務部への情報提供が漏れており、B子さんはそのまま登録していました。
本来であれば、当該社員の住所が店舗から離れているため、住所を登録する際に通勤手当がないのはおかしいと気付くべきでした。A輔さんも登録漏れを見落としたまま給与計算をしてしまっていました。
通勤手当の発生に伴い、社会保険料の追加徴収も発生することに…
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特定社会保険労務士
大阪市出身。2023年、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。法学博士(大阪大学2026年)。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書(共著)に『労働事件予防の実務』(第一法規)など。http://www.sr-iyori.com/







