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お遍路で「涙が止まらない」そんな体験は得られるか

今沢真・客員編集委員
19番の立江寺で。後ろに立てかけた木のつえは、6日間で先端がぼろぼろになり、数センチ短くなった=徳島県小松島市で2023年6月16日、今沢真撮影
19番の立江寺で。後ろに立てかけた木のつえは、6日間で先端がぼろぼろになり、数センチ短くなった=徳島県小松島市で2023年6月16日、今沢真撮影

徳島編(下)

 なぜお遍路をするのか――。経済プレミア編集部の64歳記者が6月中旬に徳島県で歩いてお遍路をし、出会った人たちに聞いてみた。

 8番のお寺「熊谷寺」(阿波市)で休んでいた男性に尋ねると、答えは「もう子育ても終わったし……。終活やな」だった。山口県在住の72歳。前夜に自宅を出て、車で7時間かけて徳島入り。30分だけ寝て1番からそのまま車で回っている。

 その男性は勤め先を定年退職し、嘱託で働く。今回は3日間の休みをもらって高知県にも足を運ぶつもりだ。「1週間前に、急にお遍路に行こうと思いついた。7月くらいにまた来て、9月にも来れれば全部回れるかな?」

 私とほぼ同じ行程で歩きお遍路をしている男性にも、宿でビールを飲みながら聞いてみた。東京都在住。60歳になったばかりで「定年したらお遍路を回ろうとずっと思っていた」と言う。ただ、勤め先の人事規定が「60歳になった年度末に退職」に変わったそう。定年が少し伸び、「早く辞めたかったのにな……」と不本意な表情を見せた。

 この男性はいったん東京に戻り、翌月に2度目のお遍路に出かけたと連絡をくれた。「東京に戻ると、早く四国に帰りたいと思います」。すっかり魅せられたようだ。

「禅に興味がある」

 外国人にも理由を尋ねた。お遍路宿で隣の部屋に泊まった30代後半の米国人男性は「禅が好きだから」と答えた。仏教の心の持ちように関心があるということだろう。彼は米サンフランシスコ市在住で、勤めていたIT企業をいったん辞めて旅に出た。妻は仕事があり同行できなかった。仲よさそうな2人の写真をスマホで見せてくれた。

 前回の「徳島編・中」に登場した看護師の20代米国人男性も「禅に興味があります」と話していた。外国人が日常では触れられない仏教、お遍路、禅といった世界にあこがれを感じるのかもしれない。

 1200年以上前に弘法大師が修行した道。道中、「○○まで2分」の看板を見つけてぬか喜びすると、「車で」の話だとほどなく気がつく。仕方なくつえを頼りにひたすら歩く。そんな旅に外国人も日本人も強く引き寄せられる。

訳もなく涙が

 3日目の夜に、宿泊先で働く男性が蛍の舞う川に誘ってくれた。その男性は、昨年2カ月あまりかけて四国を歩き通したという。おそらく40代。長髪長身で日焼けして真っ黒。サーファーのような風貌だ。彼…

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客員編集委員

 1983年毎日新聞入社。89年経済部。日銀・財研キャップ、副部長を経て論説委員(財政担当)。15年経済プレミア編集長。24年6月退職し、客員編集委員。16年に出版した「東芝 不正会計 底なしの闇」(毎日新聞出版)がビジネス部門ベストセラーに。ほかに「東芝 終わりなき危機」「日産、神戸製鋼は何を間違えたのか」など。16~18年度城西大非常勤講師。