ビッグモーターの闇 フォロー

中古車買い取りトラブル「ビッグモーター」が残した教訓

川口雅浩・経済プレミア編集部
中古車の買い取りをアピールするビッグモーターの看板=東京都多摩市で2023年9月19日、猪飼健史撮影
中古車の買い取りをアピールするビッグモーターの看板=東京都多摩市で2023年9月19日、猪飼健史撮影

 「今すぐ契約しろ。ここにクルマのキーを置いていけば2倍の20万円を払う。他店には行くな」。約2年前、中古車販売大手ビッグモーターの店舗を訪れた東京都内の50代の会社員は店員にこう言われ、恐怖に近い威圧感を感じたという。

 東京都内で単身赴任中だった会社員は突然、自宅のある地方都市へ転勤を命じられた。自宅には家族のクルマがあるため、都内で使っていた自分のクルマを売却しなくてはならなくなった。

 会社員はドイツの高級乗用車BMWを所有していた。ある中古車販売店を訪れると、買い取り価格は10万円と言われた。

 不本意だった会社員は、次にビッグモーターの大型店舗を訪れた。冒頭の発言は、そこで会社員が店員から受けた言葉だ。

 20万円でも不本意だった会社員は、もう1軒、大手の中古車販売店を訪ねるつもりだった。ところが、ビッグモーターの店員から「今すぐ契約しろ。他店には行くな」と言われ、戸惑った。

 「本当なら、もう1軒回って買い取り価格を比較したかったが、ビッグモーターは強引な態度だった。引っ越しまで時間がなかったので、仕方なく、言われた通り契約せざるを得なかった」。毎日新聞の取材に会社員はこう答えた。

契約後に「水没車」と言われ提訴のケースも

 これは消費者庁や国民生活センターが中古車売買で注意を呼び掛ける典型的なケースだ。「査定時に強引に契約させられ、クルマを持っていかれた」という苦情は、「契約後すぐにキャンセルを申し出たら、高額なキャンセル料を提示された」というトラブルなどとともに、数多くの相談が寄せられている。

 こんなケースもある。クルマを査定してもらい、店員から買い取り金額の提示を受け、売却する契約をした。このクルマで以前、軽い接触事故を起こし、修理歴があることは伝えていた。ところが数日後、「予想以上の修復歴が見つかったので減額または解約する」と一方的に言われた。この場合、減額または解約に応じなければならないのか。

 答えは「ノー」だ。「プロである事業者が事故歴の…

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経済プレミア編集部

1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。