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60歳の夢「自宅ビル売って地方移住」妹を説得できたワケ

広田龍介・税理士
 
 

 独身男性のYさん(60)はフリーランスの設計者として自宅で仕事をしている。スキューバダイビングが趣味で、美しい海の近くに移り住むのが昔からの夢だったが、昨年、同居の母が亡くなったのを機に、本格的に地方移住を考えるようになった。だが、自宅のあるビルの処分をめぐり、妹と意見が対立している。

父の相続「財産を3人で分割」

 自宅のあるビルは5階建ての賃貸併用住宅で、40年前に父親が建てたものだ。

 Yさんは妹と2人きょうだいだ。妹が結婚した後は、5階部分は両親とYさん、4階部分は妹夫婦がそれぞれ居住用とし、1~3階を賃貸に出していた。

 父親は8年前に亡くなった。主な財産であるビルの土地・建物をどうするか、相続人である母親とYさん、妹の3人で話し合った。

 その結果、将来的にはYさんが全てを引き継ぐことを前提とするが、父の相続については、財産を3人で分割することになった。

 まず、土地は母とYさんが2分の1ずつ相続した。建物については、賃貸と妹夫婦の居住部分にあたる1~4階、つまり持ち分80%を妹が相続し、母とYさんが居住する5階部分、つまり持ち分20%を母が相続した。

 この分割の狙いは二つあった。

 ひとつは、税制の特例を活用するためだ。

 相続税には、配偶者が相続した遺産のうち課税対象1億6000万円まで課税されない「配偶者控除の特例」や、亡くなった人の自宅・事業に使っていた宅地の評価額を最大8割削減できる「小規模宅地の特例」がある。これらの適用を受ければ税額を抑えることができる。

 もうひとつは、Yさんと妹の取得財産のバランスをとるためだ。建物の賃貸部分を妹が得れば、妹には定期的な賃貸収入が入る。

 将来…

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税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。