2024年度税制改正は、検討課題である退職金課税の見直しを早々に先送りした。政府は23年6月の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」は見直しを盛り込んだが、「サラリーマン増税」という見方が強まるのを避けた。ただし、現行の退職金課税に問題がある点は政労使でほぼ合意があり、与党税制改正大綱は「具体的な案の検討」を明記した。今後の見直しの方向性を考える。
税優遇の大きい退職所得課税
退職金の受け取り方は一時金と年金の二つがある。会社により、一時金▽年金▽一時金と年金の併用▽一時金と年金の選択――など扱いは違う。
受け取り方で、所得税・住民税の税額は変わる。
一時金の場合、給与など他の所得と切り離し「退職所得」として扱う。税額計算は3ステップからなる。
まず、退職金額から勤続年数に応じた退職所得控除額を引く。控除額は、勤続20年までは1年あたり40万円で、20年を超えた年から同70万円。次に、控除額を引いた額の半分を課税対象とし、最後に、税率を掛けて税額を出す。
つまり、控除額が大きい▽控除後の額の半分にしか課税しない▽分離課税で税率が低い――の三段階で税負担を抑えている。
退職所得課税は源泉徴収で済み、確定申告が必要ないため、税を意識しにくいが、税優遇は大きい。1970年代の税制改正では平均的な退職金額には課税しないという方針が示され、流れは今も続く。
例えば、22歳で大学を卒業し60歳定年まで38年間勤続すると2060万円まで非課税だ。厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、勤続35年以上・大卒者の退職金は平均2037万円(22年)でほぼこの水準だ。
税制の中立性に「二つの問題点」
この退職所得課税を見直すべきだという議論がある。問題点は大きく二つだ。
一つは、控除額が勤続20年を境に高まることだ。
例えば(A)同じ会社で38年働き退職金2000万円を受ける(B)最初の会社で19年、転職した会社で19年働き、それぞれ退職金1000万円を受ける――のケースを比べよう。勤続年数と退職金額は同じだが、税額はAがゼロ、Bは約36万円と差が出る。
現行制度は、日本型雇用慣行を前提に同じ会社で長く働くことを優遇し、…
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