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マイナス金利解除へ「二つのシナリオ」元日銀理事に聞く

今沢真・客員編集委員
2023年最後の金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の植田和男総裁=東京都中央区の日本銀行本店で2023年12月19日、和田大典撮影
2023年最後の金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の植田和男総裁=東京都中央区の日本銀行本店で2023年12月19日、和田大典撮影

門間一夫・元日銀理事に聞く(上)

 2024年、日銀が金融正常化に進む道筋が見えてきた。植田和男総裁の「次の一手」は何か。元日銀理事の門間一夫・みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミストは春に「マイナス金利解除」の可能性が高いと見る。2回に分けて聞く。

 ――「植田日銀」の次の一手は何でしょうか。

 ◆門間一夫さん 春くらいにマイナス金利を解除する可能性が一番高いと見ています。春闘の結果が3月に部分的に出てきて、賃上げが前年並みかそれ以上になると確認できれば、他の状況も踏まえて「2%物価目標の実現」が見通せると判断するということです。

 ただし、その確率はそれほど高いものではなく、5割ぐらいかと思います。賃上げが十分ではない可能性があるからです。大企業はある程度賃上げできるでしょうが、中小企業からは「賃上げは難しい」という声もあります。

 賃上げがある程度できたとしても、2%の物価上昇が本当に定着しているかがまだよくわかりません。賃上げがサービス価格の上昇に反映される状況にならないと、確信は持てないでしょう。

マイナス金利解除の条件

 ――賃上げとともに注目することは?

 ◆内外の経済情勢に不確実性があります。国内は価格転嫁が進み企業収益はかなり良いですが、経済全体が良いとも言えません。例えば個人消費は非常に弱いです。足元の物価上昇が消費にマイナスになっており、上向きに転換していくのかよくわかりません。

 一方、米国経済は今のところ順調です。インフレが収まり経済も一定の成長を続けるソフトランディングの見通しが強まっています。しかしこれまで5%を上回る利上げをしてきた影響で、今年、景気後退かそれに近い状態に陥るリスクがあります。

 ――どれほどの見通しがつけばゼロ金利解除の条件を満たすでしょうか。

 ◆程度問題です。米国経済の不安から株価が大きく下がっているとか、為替が急速に円高に動いているといった状況で日銀が動くのは難しいと思います。ただ「リスクは多少残る」ぐらいなら、日銀は国内の物価と賃金の情勢を見て動くことができると思います

サプライズはない

 ――植田総裁は就任以降、長期金利操作の修正に取り組んできました。次の「マイナス金利解除」は、これまでと事前の発信のやり方は変わりますか。

 ◆大きく変わると思います。金融政策は透明性を高くして行うのが基本ですが、長期金利をコントロールする政策は事前に市場に織り込ませることができません。上げ下げの見通しを発信するだけで長期金利が動いてしまうからです。

 これに対し「マイナス金利の解除」は普通の短期金利の政策変更です。中央銀行が事前に発信して市場に織り込ませることが一般的です。必ず何らかの情報発信があると思います。できれば市場が100%近く見込む状態にして、影響を最小限にして政策を打つ。サプライズはないと思います。

二つのシナリオ

 ――マイナス金利を解除したとして、その後の金融政策の見通しは。

 ◆シナリオは2通りあります。一つは4月にマイナス金利を解除できる場合です。そのときは…

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客員編集委員

 1983年毎日新聞入社。89年経済部。日銀・財研キャップ、副部長を経て論説委員(財政担当)。15年経済プレミア編集長。24年6月退職し、客員編集委員。16年に出版した「東芝 不正会計 底なしの闇」(毎日新聞出版)がビジネス部門ベストセラーに。ほかに「東芝 終わりなき危機」「日産、神戸製鋼は何を間違えたのか」など。16~18年度城西大非常勤講師。