一気にわかる! 池上彰の世界情勢 フォロー

池上彰が見る「91件の刑事起訴」でもトランプ人気のワケ

池上彰・ジャーナリスト
再び大統領を目指すドナルド・トランプ氏=米南部フロリダ州で2024年3月5日、AP
再び大統領を目指すドナルド・トランプ氏=米南部フロリダ州で2024年3月5日、AP

 2023年12月現在、トランプ氏はアメリカの司法当局から四つの事件、合計91件の罪で起訴され、裁判が予定されています。これだけ多数の疑惑を抱えている人物が大統領選挙の共和党候補指名争いで首位にあるというのは、アメリカの憲政史上前代未聞。仮に裁判でトランプ氏の有罪が確定すれば禁錮刑になる可能性もあり、裁判の行方は大統領選挙の大きな争点になりそうです。

トランプ氏「極左による魔女狩り」と主張

 ただ、トランプ氏を支持する「政治活動委員会」は、これらの起訴について、「政治的な捜査である」と批判しています。トランプ氏も自身の起訴について「私は無実である」「これは極左による魔女狩りだ」と主張しています。

 実は、「機密文書の不適切な取り扱いについての疑惑」と「2020年の大統領選挙を覆そうとした疑惑」に関して、起訴を行ったのは民主党のバイデン政権が指名したジャック・スミス連邦特別検察官でした。

 また、東部ニューヨーク州における「不倫相手に口止め料を払ってもみ消しを図った疑惑」と「ジョージア州における選挙結果を覆そうとした疑惑」に関しては、民主党から立候補して選ばれた地区検事(検察官)が捜査を指揮していました。

 このことをもって、トランプ氏は2023年に入り立て続けに行われた自身の起訴について、「バイデン政権による陰謀だ」としているのです。

なぜ検事に政党色があるのか

 なぜ検事に政党の色がついているのでしょうか?

 日本では通常考えられないことですよね。アメリカの司法制度では、「裁判も民主的に進めなくてはならない」という考えから有権者が選挙で検事を選び、有権者の中から抽選で選ばれた陪審員が罪の有無を判断するからです。

 たとえば、3月にトランプ氏の起訴の手続きをしたのはニューヨーク州マンハッタン地区の検事ですが、起訴すべきだと決めたのは、一般市民から抽選で選ばれた陪審員たちが構成する大陪…

この記事は有料記事です。

残り1203文字(全文1999文字)

ジャーナリスト

 1950年、長野県生まれ。ジャーナリスト。慶應義塾大学卒業後、73年にNHK入局。94年から11年にわたり「週刊こどもニュース」のお父さん役を務め、わかりやすい解説が話題になる。2005年よりフリーのジャーナリストとして、テレビ、新聞、雑誌、書籍などで幅広く活躍。現在、名城大学、東京工業大学など6つの大学で学生たちの指導にもあたっている。