会社員のA介さん(53)は今春から営業部の次長に昇格しました。A介さんを引き上げてくれた上司は、55歳の役職定年で他社に転職してしまい、「自分の会社員人生も次長止まり」と諦めています。A介さんも、あと2年となり、会社の役職定年制そのものに疑問を感じるようになりました。
A介さんは今の仕事で、まだ挑戦したいことがあります。今まで積み上げてきた自分の経験値や人脈を役立てる時が来たと考えています。定年は60歳ですが、65歳まで再雇用制度があります。それを考えると、あと12年もあるのに、途中ではしごを外されるようで納得できません。
A介さんの下の世代となる40代の社員は、不景気で新卒採用を抑制していたことから、人材が手薄です。管理職が務まる人材がいるのか、A介さんは不安です。
そもそも会社が決めた「役職定年ルール」は絶対なのか。誰もが認める成績を上げれば、55歳でも昇格が望めるものなのか、A介さんはもんもんとしています。
役職定年制とは
役職定年制とは一定の年齢に達した場合に、従業員を管理職ポストから外し、専門職などの処遇に変更する制度を言います。役職定年制について定めた法律はありません。会社ごとに就業規則に定め、実施している制度です。
従業員が500人以上の企業では30%が導入しているという人事院の調査結果もあります。導入している企業では、主として次世代の育成、組織の活性化、人件費増の抑制などを目的としているようです。
役職定年を何歳で実施するかについても、企業ごとにルールが異なりますが、55~58歳で決めている企業が多いようです。ただし、現在は65歳までの雇用が企業に義務付けられています。A介さんが懸念するように、55歳で役職定年とした場合、退職までの10年間について、従業員のモチベーション維持が難しいと言えるでしょう。
モチベーション低下を防ぐには
役職定年は、後任者が不在な場合などを除き、原則として…
この記事は有料記事です。
残り900文字(全文1712文字)
特定社会保険労務士
大阪市出身。2023年、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。法学博士(大阪大学2026年)。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書(共著)に『労働事件予防の実務』(第一法規)など。http://www.sr-iyori.com/







