A美さん(26)は従業員100人ほどのメーカーの総務部で働いています。社員の給与計算や社会保険、雇用保険の手続きなどが担当です。総務部に配属されて1年が経過し少し仕事に慣れてきたところで、社員と会社の間で思いがけないトラブルが起き、困惑しています。
8カ月前に同社の工場で採用したパートタイマーのB子さん(52)は「遅刻が多い、作業を指示通りに進めない、自分のミスを認めず他人に責任を押し付ける」など、勤務態度に問題がありました。
現場で何度注意しても一向に改善されないため、工場長がB子さんを会議室に呼びました。少し厳しめに注意したところ、B子さんは「私を辞めさせたいってことですね。こんな会社、言われなくても辞めます!」と、作業着を脱いで帰宅してしまい、翌日以降出勤しなくなりました。
工場長から連絡を受け、A美さんがB子さんに退職届の提出と健康保険証の返却を求めました。すると、B子さんは「これって会社都合の退職になりますよね。私は何も悪いことをしていないのに、突然工場長に呼ばれて、いわれのない中傷を受けました」と言います。
A美さんは総務部で勤怠データを確認しているため、B子さんに遅刻が多いことは把握しています。工場は本社とは別の場所にあり、B子さんの勤務態度はわかりませんが、工場長は社長の信頼も厚く、どちらかというと温和な性格です。部下にいわれのない中傷をするような人ではないとA美さんは考えています。
ただ、B子さんの言い方があまりに攻撃的で、反論すると何を言われるかわかりません。A美さんはどのように退職の手続きを進めるべきか悩んでいます。
「自己都合」「会社都合」とは
社員の都合で退職する場合、退職届の提出を義務付けている会社が一般的です。ただし事例のように、社員から退職届が得られない場合もあります。社員が主張する退職理由と会社の認識が異なり、離職票に記載する退職理由をめぐり社員と会社がトラブルになるケースが…
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特定社会保険労務士
大阪市出身。2023年、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。法学博士(大阪大学2026年)。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書(共著)に『労働事件予防の実務』(第一法規)など。http://www.sr-iyori.com/







