Kさん(72)は1650平方メートルの広い敷地で工場を経営している。あたりは、かつては同じような町工場が建ち並ぶ工場街だったが、廃業などで次第にマンションなどに置き換わり、今やKさんの工場は、時代から取り残されたような浮いた存在になっている。
マンションの資産価値上げるには
Kさんも以前から、そろそろ潮時だろうと考え、工場を解体してマンションを建設することを計画していた。
だが、それに踏み切れない事情があった。
工場の隣には、Aさんの自宅敷地100平方メートルがある。Aさんの土地は道路に面しており、それを取り込んで工場敷地と一体化できれば、きれいな四角形の「整形地」になる。マンションの資産価値がぐんと上がるのは間違いない。
そこで、Aさんに再三、土地を売ってほしいと声を掛けてきたのだが、Aさんは「売る気はない」の一点張りだった。そんなこんなで計画が延び延びになっているのだ。
先日、そのAさんが亡くなった。相続人はAさんの妻と長男、長女の3人。Aさん宅の建物は老朽化しており、建て替えも必要になっているようだ。
Kさんは、相続が始まって状況が変わったかもしれないと思い、少し時間を置いてから、Aさん宅を訪れた。
改めて、土地を譲ってほしいと持ち掛けると、Aさん同様、家族も「この場所から離れる気はなく、売却する意思はない」という考えだった。ただし、話をするうちに「近くに適当な土地があれば、移転するのはやぶさかではない」という柔軟な考えを引き出すことができた。
Kさんはこれを一歩前進ととらえた。近くで適当な土地を探すと、Aさん宅から道路向かいに50メートルほどの場所で、Bさんが150…
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