高齢化時代の相続税対策 フォロー

72歳町工場主「廃業で土地活用」3者満足の妙策とは

広田龍介・税理士
 
 

 Kさん(72)は1650平方メートルの広い敷地で工場を経営している。あたりは、かつては同じような町工場が建ち並ぶ工場街だったが、廃業などで次第にマンションなどに置き換わり、今やKさんの工場は、時代から取り残されたような浮いた存在になっている。

マンションの資産価値上げるには

 Kさんも以前から、そろそろ潮時だろうと考え、工場を解体してマンションを建設することを計画していた。

 だが、それに踏み切れない事情があった。

 工場の隣には、Aさんの自宅敷地100平方メートルがある。Aさんの土地は道路に面しており、それを取り込んで工場敷地と一体化できれば、きれいな四角形の「整形地」になる。マンションの資産価値がぐんと上がるのは間違いない。

 そこで、Aさんに再三、土地を売ってほしいと声を掛けてきたのだが、Aさんは「売る気はない」の一点張りだった。そんなこんなで計画が延び延びになっているのだ。

 先日、そのAさんが亡くなった。相続人はAさんの妻と長男、長女の3人。Aさん宅の建物は老朽化しており、建て替えも必要になっているようだ。

 Kさんは、相続が始まって状況が変わったかもしれないと思い、少し時間を置いてから、Aさん宅を訪れた。

 改めて、土地を譲ってほしいと持ち掛けると、Aさん同様、家族も「この場所から離れる気はなく、売却する意思はない」という考えだった。ただし、話をするうちに「近くに適当な土地があれば、移転するのはやぶさかではない」という柔軟な考えを引き出すことができた。

 Kさんはこれを一歩前進ととらえた。近くで適当な土地を探すと、Aさん宅から道路向かいに50メートルほどの場所で、Bさんが150…

この記事は有料記事です。

残り1595文字(全文2293文字)

税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。