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会社が労災保険を使うと保険料が上がる?本当なのか

井寄奈美・特定社会保険労務士
=Getty Images
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 A夫さん(45)は従業員200人のスーパーマーケットの総務責任者です。同社では人手不足が続いています。このため、比較的採用がしやすいアルバイトやパート従業員を増やしています。そこで新たな不安を感じることになり、頭を悩ませています。

 新しく採用したアルバイトやパート従業員は、立ち仕事や物を運ぶ仕事の経験がない人もいます。定年退職後の60代の人も増えています。正社員やパートリーダーが作業を指示しますが、つきっきりというわけにはいきません。

 品出しの際、高齢のパート従業員が転倒し、けがをするケースが最近増えています。従業員の不注意か、加齢による視力の低下が原因と思われるものもあります。現場に注意喚起を促していますが、労災保険を使いすぎると保険料が上がると聞き、A夫さんは気になっています。

労災保険とは

 労災保険は業務に関連してけがをした場合、有害な化学物質などを取り扱う業務で特定の疾病を発症した場合、通勤中にけがをした場合などに使うことができます。国が運営している制度で、従業員を一人でも雇っている会社や個人事業主は必ず加入しなければなりません。

 労災保険は、自社の業務が原因でけがや病気をすることになった従業員を補償すると考えられることから、会社だけが保険料を負担しています。また、業務中の事故は、会社が防止措置をとっていても発生しうるものです。このため、保険の給付を決定する際に、会社や従業員の過失の有無は問われません。

 例えば事例にあるスーパーの業務中の転倒事故について、「従業員の不注意が原因だ」と会社が考えたとしても、会社が指図した業務で発生しており、労災申請すべき事故となります。労災が適用になるかどうかは、最終的に労働基準監督署の判断となります。

労災保険と会社の保険料負担

 従業員が業務に関連してけがをしてしまった場合、会社は労災保険を使うことで、会社も従業員も医療費を負担することなく治療を…

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特定社会保険労務士

 大阪市出身。2023年、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。法学博士(大阪大学2026年)。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書(共著)に『労働事件予防の実務』(第一法規)など。http://www.sr-iyori.com/