木内登英の「日銀ウォッチ」 フォロー

物価高なのにデフレ脱却?石破政権「アベノミクス総括を」

木内登英・野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト
就任前はアベノミクスに批判的だった石破茂首相=首相官邸で2024年10月9日、平田明浩撮影
就任前はアベノミクスに批判的だった石破茂首相=首相官邸で2024年10月9日、平田明浩撮影

 石破茂政権のもとで議論を深めるべきことは安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の総括だ。石破氏は総裁選でアベノミクスの金融緩和と財政出動の弊害を念頭にその功罪を検証すべきだと主張した。しかし、首相就任後はトーンダウンし、むしろアベノミクスを擁護する発言をするなど主張のブレが目立つ。筆者は石破政権で経済政策をしっかり進めるには、まず総裁選の公約通り、「アベノミクスの総括」をすべきだと考える。 

過度な金融緩和、財政出動の弊害

 アベノミクスとは2012年12月に発足した第2次安倍内閣が打ち出した「三本の矢」からなる経済政策だ。「第一の矢」がデフレ脱却を目的とした大胆な金融政策、「第二の矢」が機動的な財政政策、「第三の矢」が民間の投資を喚起する成長戦略だった。

 なかでも最も重要な政策「第三の矢」を支えるための裏方の役割であるはずの「第一の矢」「第二の矢」が前面に出てしまい、長期間実施された。いたずらに長期化した超金融緩和は急速な円安をもたらし、物価高を生んだ。そして低金利環境に甘んじて安易に国債発行に頼った財政出動を経常的に行うような財政規律の低下という深刻な問題を引き起こした。筆者はこの主客逆転がアベノミクスの問題点だったと考える。

 アベノミクスの「第三の矢」の方向性は正しく、すべてを否定する必要はない。しかし、過度な金融緩和、財政出動がもたらした問題について、しっかりと総括する必要があるだろう。

新著でアベノミクスを批判した石破氏

 石破氏もアベノミクスの問題点を認識しているようだ。石破氏が自民党総裁選前の8月7日に発行した新著「保守政治家 わが政策、わが天命」(講談社)のな…

この記事は有料記事です。

残り1520文字(全文2216文字)

野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト

 1963年生まれ。87年早稲田大学政治経済学部卒業後、野村総合研究所入社。90~94年にドイツ(フランクフルト)、96~2002年にニューヨークに赴任し、海外経済を担当。02年野村総合研究所日本経済研究室長、04年野村証券に転籍し、07年経済調査部長兼チーフエコノミスト。12年日本銀行政策委員会審議委員。17年7月から野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト。