Iさん(75)は不動産賃貸会社を経営している。実家は農家だったが、家業を継ぐつもりはなく、大学卒業後はサラリーマン生活を送るつもりだった。しかし、実家近くに工場が進出することになったのをきっかけに、結果的にこの半世紀の間、実家の所有する土地活用に専念することになった。
最初の確定申告で驚き
Iさんの家は代々農業を営んできた。Iさんは3人きょうだいの長男だが、大学卒業後は、不動産会社に就職し、実家には休みの時に戻るぐらいだった。
だが、実家近くに工場の進出計画が持ち上がったことがIさんの転機になった。
仕事柄、工場が従業員の社宅を建築してくれる地主を探しているという情報がIさんの耳に入ってきた。
調べてみると、工場が求めているのは、食堂や浴場などの設備を備えた鉄筋5階建ての本格的な社宅だった。
30年の賃貸契約で一括借り上げするが、期間満了後も延長できるという。家賃は、共用部を含めた総床面積で計算するため、利回りは15%と高く、建築資金は7年間で回収できる計算だ。地主にとってはかなり好条件だった。
Iさんが実家にこの話を伝えると、両親は大乗り気になって手を挙げ、トントン拍子に話が進んだ。
だが、土地を所有している父親には賃貸管理の知識が全くない。父親から乞われ、不動産に詳しいIさんが社宅の建物の名義人を引き受けることになった。
行きがかり上とはいえ、賃貸経営に実際に乗り出してみると、思いもよらぬことも多かった。
Iさんが最も驚いたのは、最初の確定申告だ。当時の所得税・住民税の最高税率は88%。建物登記や不動産取得税などの費用や、借入利息などの経費が発生したため、不動産所得は抑…
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