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東電の勝俣元会長に聞きたかった「原発やるべきだったのか」

川口雅浩・経済プレミア編集部
福島第1原発の事故後、記者会見に臨む東京電力の勝俣恒久会長(当時)=東京都千代田区の東京電力本店で2011年4月17日、津村豊和撮影
福島第1原発の事故後、記者会見に臨む東京電力の勝俣恒久会長(当時)=東京都千代田区の東京電力本店で2011年4月17日、津村豊和撮影

東電・勝俣恒久元社長が生前語ったこと(下)

 大手電力会社のトップは記者会見などで原発について聞かれると、昔も今も「安全を最優先に推進します」と答える。核燃料サイクルも事実上、破綻しているのは明白なのに、今なお「推進」だ。これは政府・自民党が核燃料サイクルを含む原子力政策を国策として進めているからだろう。

 そんな経営者が多い中で、2002年10月、東京電力の社長に就任した勝俣恒久氏(24年10月21日、84歳で死去)は原発反対とまでは言わないが、原発に慎重もしくは懐疑的なのは明らかだった。

 社長就任直後の毎日新聞のインタビューでは、核燃料サイクルについて「再処理工場は技術的に複雑な装置で、未知の世界がいろいろある。そういう意味で不安感がある。(立ち止まって考えるべきだという指摘は)ひとつの考え方としては、あると思う」と答えた。「バックエンド(使用済み核燃料などの後処理)には未知のコストがあり、悩みが大きい」とも語った。

 そこで私はもっと勝俣氏の本音を聞きたいと思った。私はエネルギー業界の担当だった02年10月から04年3月にかけ、勝俣氏の東京都内の自宅を何度も訪れた。新聞記者がキーパーソンの自宅を訪ねる「夜回り」取材というやつだ。自宅ではいつも和室に案内され、勝俣氏が対応してくれた。

「そういう考え方もある」

 私は「地震学者の学会で、大地震の際の原発の安全性が疑問視され、事故の不安が指摘されている。仮に安全運転しても使用済み核燃料がたまり続ける。少なくとも原発の新増設はやめ、カネばかりかかって、実現できそうにない核燃料サイクルも欧米のように撤退したらよいのではないか」と、恐る恐る聞いてみた。

 今なら何てことない質問だろうが、当時、東電社長に夜回りとはいえ、面と向かって聞くには勇気が必要だった。私のような質問をする新聞記者は異端視されるので、ライバル紙を含めて皆無に近かった。

 勝俣氏は目を閉じ、私の質問を黙って聞いていた。しばらくして、勝俣氏は「うん、そういう考え方もある」とだけ答えた。私の考えを頭ごなしに否定しなかった。

 勝俣氏の自宅を訪れるたび、私は控えめながらも、原発を取り巻く現実について、いろいろ質問した。

 02年夏に発覚した東電の「トラブル隠し」の影響で、…

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経済プレミア編集部

1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。