暴言を繰り返したトランプ氏が、なぜ再びアメリカ大統領に選ばれたのか――。ジャーナリストの池上彰さんは、四つの理由を挙げます。この連載は池上さんが1月に出版した「一気にわかる!池上彰の世界情勢2025」(毎日新聞出版)の一部をウェブ用に編集したものです。
132年ぶりの大統領経験者の返り咲き
最終盤の世論調査では支持率が拮抗(きっこう)していた民主党のハリス氏(60)と共和党のトランプ氏(78)。大接戦が予想され、「結果は開票日から数週間わからないのではないか。もしかすると、最高裁に判断を委ねることになるかもしれない」などと言われていました。
しかし、いざふたを開けてみると、トランプ氏は激戦7州のすべてで勝利し、投開票翌日の11月6日には早々と当選が確実となりました。最終的に獲得した選挙人の数は、トランプ氏312人(31州)、ハリス氏226人(19州・1特別区)で、トランプ氏がハリス氏に大差をつけました。
今回獲得した選挙人が2024年12月に自分が支持する大統領候補に投票を行い、年が明けた1月に開票が行われ、トランプ氏は25年1月20日に第47代大統領の就任式を迎えました。アメリカで大統領経験者が返り咲きを果たすのは実に132年ぶりのこと。同時に、刑事事件の被告が大統領選挙で勝利するというのも、異例の事態です。
大統領選挙と同時に行われた連邦議会選挙でも、共和党が上院と下院の両方で多数派となりました。これにより、赤をシンボルカラーとする共和党が、ホワイトハウス、上院、下院を掌握する、いわゆる「トリプルレッド」の状態となり、トランプ政権は政策を通しやすい状況になっています。
黒人女性、アジア系で初の大統領を目指したハリス氏でしたが、敗北が確実になったところでトランプ氏に電話で祝意を伝え、平和的な政権移行に協力すると約束しました。
その後、ハリス氏は母校のハワード大学で「アメリカの民主主義の原則は、選挙に負けたなら結果を受け入れることです。この原則が専制国家との違いであり、国民の信頼を求めるなら誰もが尊重しなければならない」と演説し、敗北を宣言しました。ここには、4年前に敗北を認めようとしなかったトランプ氏への皮肉も感じられました。
トランプ氏再選の理由
さて、選挙戦で(それ以前からですが)粗暴で支離滅裂な発言を繰り返したトランプ氏は、一般的に「良識に欠けた人物」と評価されています。しかし、そのような人物が有権者の過半数から支持を受け、2度もアメリカという大国の大統領に選ばれました。これはいったいどういうことでしょうか。
一つ目の理由は、トランプ氏には「有権者の約4割」ともいわれる岩盤支持層が存在することです。
トランプ氏は演説などで具体的な政策についてほとんど触れず、政敵の批判を繰り返すのみです。ここに書くこともはばかられるような過激な発言をすることも多く、共和党が政権を担うことでアメリカや世界がどう変わるのかということを、筋道立てて説明することもほとんどありません。
しかし、私がアメリカでトランプ支持者たちに彼の暴言や失言についてどう思うかをインタビューしたところ、「人間らしくていいじゃないの」「あんなのはただのジョークだよ」という声が多…
この記事は有料記事です。
残り1431文字(全文2777文字)







