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池上彰氏「カナダで香港民主活動家の周庭さんに聞いた」

池上彰・ジャーナリスト
拘束されていた警察署から保釈された周庭氏=香港北東部・大埔警察署で2020年8月11日、福岡静哉撮影
拘束されていた警察署から保釈された周庭氏=香港北東部・大埔警察署で2020年8月11日、福岡静哉撮影

 2024年3月、私はカナダのトロントで香港の民主活動家の周庭(しゅうてい)さんに会って独占インタビューをしました。香港の人は中国名とは別に英語名を持っている人が多く、彼女も「アグネス・チョウ」という名前を使っていますので、以降は「アグネスさん」と書きます。

 アグネスさんを有名にしたのが、14年9月に香港で起きた民主化を求める大規模な抗議活動、通称「雨傘革命(運動)」です。

 雨傘革命は、中国政府が香港の選挙制度を中国政府に都合のいいようにしようとしたことに香港市民が反発して起きました。かつてイギリスの植民地だった香港は、1997年に中国に返還された後は「1国2制度」に基づいた高度な自治が認められていました。

 しかし、2017年の行政長官選挙で中国政府が候補者を事前に決める方針を発表。これにより民主的な選挙が行われないとして、学生や市民が街に集まり、抗議デモを展開しました。

 警察の放水や催涙弾による制圧に対し、デモ参加者が雨傘で防御したことから、抗議活動は雨傘革命と呼ばれるようになりました。

 その後も、中国大陸、台湾、マカオで容疑者とされた人物を香港で逮捕して中国に引き渡しができるようにする「逃亡犯条例」の改正案の動きや(これは大規模な反対運動を受けて撤回されました)、香港政庁に反対する運動を取り締まることができるようにする「国家安全維持法」の制定などの動きがあるたび、香港では大規模な抗議運動が起きてきました。

 しかし、それらは中国政府によって徹底的に弾圧されたのです。

 私がアグネスさんとお会いしたカナダのトロントは、彼女の留学先です。私がアグネスさんにインタビューすることは極秘。アグネスさんの住んでいる場所も通っている大学院も秘密でした。私たちは市役所前で待ち合わせ、貸しスタジオに移動してのインタビューとなりました。

 なぜそのように秘密裏のインタビューとなったかというと、アグネスさんが香港警察に脅されているからです。

 SNSなどを通じて香港の民主化への支持を訴えて活動をしていたアグネスさんは、20年8月に、香港国家安全維持法(国安法)違反の「分離独立を扇動」した容疑で逮捕されました。そして、政府に抗議する無許可デモを組織するなどした無許可集会扇動の罪で20年12月に禁錮10カ月の実刑判決を受けて服役。21年6月に出所していました。

 アグネスさんによれば、彼女は刑務所…

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ジャーナリスト

 1950年、長野県生まれ。ジャーナリスト。慶應義塾大学卒業後、73年にNHK入局。94年から11年にわたり「週刊こどもニュース」のお父さん役を務め、わかりやすい解説が話題になる。2005年よりフリーのジャーナリストとして、テレビ、新聞、雑誌、書籍などで幅広く活躍。現在、名城大学、東京工業大学など6つの大学で学生たちの指導にもあたっている。