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高額療養費「患者負担引き上げ」政府が強引に進める理由

渡辺精一・経済プレミア編集部
衆院予算委員会で立憲民主党・小川淳也幹事長の質問に答弁する石破茂首相=国会内で2025年2月21日、平田明浩撮影
衆院予算委員会で立憲民主党・小川淳也幹事長の質問に答弁する石破茂首相=国会内で2025年2月21日、平田明浩撮影

 医療費の患者負担に天井を設ける高額療養費制度について、政府が予定する限度額引き上げへの不安が広がる。深刻な負担増となる患者団体からの反発を受け、政府は2025年8月から3段階で進める見直しの来年以降は再検討するが、8月の引き上げは予定通り実施するという。見直しは24年11月の議論開始からわずか1カ月余りで決定に至ったが、その政策決定プロセスは不透明な点が多い。

衆院選後に事態が急展開

 高額療養費制度見直しは23年12月、社会保障の「改革工程」に盛り込まれたのが出発点となったが、中身も示されないまま、24年11月に議論が始まると急速に既定路線化した。この経緯を丁寧にみていこう。

 23年12月の改革工程は全世代型社会保障構築会議がまとめたもので、高額療養費制度を「賃金動向との整合性の観点」から見直す検討を行うとした。だが、同会議はそれまで高額療養費制度の具体的な議論をしたことがない。

 具体的な姿は見えず、翌年度予算編成の基本方針を示す「骨太の方針」(24年6月21日)にも盛り込まれなかった。

 ところが衆院選後の24年11月、事態は急展開する。

 最初の舞台は11月15日の全世代型社会保障構築会議だった。

 高額療養費制度は議題になかったが、ある構成員が「医療保険の存在意義に関わる重要な制度である点に考慮して、見直しの議論が行われることを期待する」とクギを刺した。大手メディアは前日の同14日、厚生労働省が限度額引き上げに着手する方針を伝えていた。

 別の構成員からも「負担軽減が先立ち、社会保障の機能が損なわれるなら本末転倒」と懸念が示された。

 だが、その後は逆に「見直しを進めるべきだ」…

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経済プレミア編集部

1963年生まれ。一橋大学社会学部卒、86年毎日新聞社入社。大阪社会部・経済部、エコノミスト編集次長、川崎支局長などを経て、2014年から生活報道部で生活経済専門記者。18年4月から現職。ファイナンシャルプランナー資格(CFP認定者、1級FP技能士)も保有。