一気にわかる! 池上彰の世界情勢 フォロー

池上彰氏「台湾有事は本当に起こるのか?」

池上彰・ジャーナリスト
台湾の頼清徳総統=AP
台湾の頼清徳総統=AP

 2024年1月13日、台湾総統選が投開票され、与党・民進党の頼清徳副総統が最大野党・国民党の侯友宜新北市長や第三勢力・台湾民衆党の柯文哲前台北市長を破り、初当選しました。

 16年から2期8年にわたり総統を務めた蔡英文氏の任期満了に伴う選挙で、頼清徳氏は蔡英文氏の外交・安全保障政策を引き継ぎ、日米や欧州などの民主主義国家との連携による台湾海峡の現状維持を掲げています。「侵略者の善意には頼らない」と中国の圧力に屈しない姿勢を示したことも、有権者の心をつかんだようです。

 一方、同時に行われた国会議員選挙にあたる立法委員選挙では、民進党は単独過半数を割って第2党に転落。国民党が8年ぶりに第1党となりました。

 新政権は与党単独では立法院で予算や法案を通過させることができませんから、これまでのような政策展開はできなくなる可能性があります。

 頼清徳氏の勝利が面白くないのが、野党の国民党を支援していた中国です。

 主に台湾出身者によってつくられ、「台湾独立」を主張する(現在、「独立」という言葉は封印していますが)民進党に対して、かつて戦いはしたが同じ「中国は一つ」という考えを持つ点で、中国共産党と国民党は一致しているんですね。現在、中国は民進党政権との対話を拒んでおり、新総統のもとでも中台の緊張は当面続きそうです。

 中国共産党が台湾をほしがるのは、国家主席である習近平氏に「かつて世界の列強に奪われた領土を取り戻したい」という野望があるからです。

 かつて清(中国)は、イギリスとのアヘン戦争に敗北して香港を植民地にされ、アヘン戦争後の弱体化に乗じたポルトガルによってマカオを植民地にされ、さらに日本…

この記事は有料記事です。

残り1256文字(全文1956文字)

ジャーナリスト

 1950年、長野県生まれ。ジャーナリスト。慶應義塾大学卒業後、73年にNHK入局。94年から11年にわたり「週刊こどもニュース」のお父さん役を務め、わかりやすい解説が話題になる。2005年よりフリーのジャーナリストとして、テレビ、新聞、雑誌、書籍などで幅広く活躍。現在、名城大学、東京工業大学など6つの大学で学生たちの指導にもあたっている。