2025年の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)〜」(NHK総合 日曜午後8時)の制作発表が行われた時、出版関係者の間で歓声が上がった。
主人公は江戸時代中期の「メディア王」蔦屋重三郎(蔦重)。現代ならば出版社社長であり、編集者、プロデューサーである。今回で64作を数える大河ドラマの中で、出版関係者が主人公になるのは初めてだ。
前年の大河ドラマの主人公は、女流小説家の祖と言われる紫式部を描いた「光る君へ」。2年連続で「コンテンツ」に深く関わる主人公が選ばれたのも、現代の日本の成長産業構造を象徴する現象だ。
「べらぼう」制作統括の藤並英樹チーフプロデューサーは「今年は放送100年。メディアに携わる人物を描きたかった。蔦重たちが作っていた黄表紙(江戸時代中期の風刺の利いた娯楽本)は当時のPOPカルチャー。いわばアニメ・ゲーム・マンガの原点だ」と語る。
「攻めた吉原描写」の狙い
1月5日から放送が始まるや、蔦重が生まれ育った吉原の描写など、従来の大河ドラマになかった「攻めた描写」が話題になった。
藤並さんは「脚本の森下佳子さんは、覚悟と責任感と言う。女郎の格差の問題などを第1回で丁寧に描かないとストーリーが立ち上がらない。やるなら奇麗な部分だけでなく、吉原の社会環境をきちんと見せる。それが反骨心や他人のために動く力という、蔦重の性格の根幹につながってゆく」と語る。
「べらぼう」は江戸中期という合戦のない時代が舞台。これも大河ドラマの中では稀有(けう)な設定だ。なぜこの時代を選んだのだろう。
「元禄や八代将軍吉宗の時代までは描いたが、江戸中期はまだ大河ではやっていない。平和な時代ではあるけれど、天災、格差社会、経済の閉塞(へいそく)感など、今の日本とイメージが重なる時代でもある。合戦というトピックがなくてもドラマとして成立すると考えた」
「勝ち…
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