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トランプ関税でドル崩壊?「経常収支の不均衡」を読み解く

鈴木浩史・三井住友銀行チーフ・為替ストラテジスト
新興国の準備金としてのドル需要の強さとそれがもたらすドルの「過大評価」がトランプ米政権では問題視されている=ホワイトハウスで2025年5月7日、AP
新興国の準備金としてのドル需要の強さとそれがもたらすドルの「過大評価」がトランプ米政権では問題視されている=ホワイトハウスで2025年5月7日、AP

 トランプ米政権は4月にほぼ全ての国を対象とした「相互関税」を含めた一連の通商政策を行ったことで、為替市場ではドル安が進行した。米ドルを切り下げるマララーゴ合意の構想が蒸し返され、新興国の準備金としてのドル需要の強さ、そしてそれがもたらす為替ドルの「過大評価」がトランプ政権では問題視されており、今後そうした構造が調整される、との思惑が台頭したためだ。

 世界経済は20年以上にわたり、米国の経常収支が赤字になる一方で中国などその他の輸出国は経常収支が黒字になる経常収支の不均衡(グローバル・インバランス)が続いている。それが米ドルにとっての「大いなる特権」として、ドル高をもたらしてきた。何がトランプ政権で問題視されているのか、そしてどうすれば良いのか、為替はドル高が是正され円高となるのだろうか。

米国の悩み種「グローバル・インバランス」を読み解く

 筆者が高校生の時なので、もう20年以上前の話にさかのぼる。どういった授業内容だったかなどは全く覚えていないが、とある先生が「米ドルはいつか暴落します。今の世界経済の構造は、持続不可能だからです」と言ったことを、今でも覚えている。当時、経済の知識が全くなかった筆者は、その先生の思想信条的な表明として、その話を受け止めた。

 大学に入り、経済学を専攻していると、その背景には「グローバル・インバランス」と呼ばれる世界経済の構造があることがわかった。なるほど、それは持続不可能であり、帰結としてはドル安であることも、理解できた。

 「グローバル・インバランス」とは何か。非常にシンプルな設定を考えよう。一つの国では資金が余っており、一つの国では資金が足りないようなケースだ。この場合、前者から後者へと貸し付けを行うことにより、双方ともに経済的な満足度は上がる。資金が足りない主体は、貸し付けてもらう資金を元手に消費や投資などが行える。資金が余っている主体…

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三井住友銀行チーフ・為替ストラテジスト

 1981年生まれ、神奈川県出身。2004年、慶応義塾大学経済学部卒業後、三井住友銀行入行。13年、一橋大学大学院国際企業戦略研究科修士課程修了。13年~18年、シンガポール駐在。22年から市場営業統括部 調査グループ長、チーフ・為替ストラテジスト。主に為替・金利を中心とした金融市場分析およびマクロ経済分析を担当。