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JR肥薩線の八代─人吉間「復旧工事が確定」廃線を免れた理由

土屋武之・鉄道ライター
被災直後の人吉駅。車両は現在、搬出済み=2020年、筆者撮影
被災直後の人吉駅。車両は現在、搬出済み=2020年、筆者撮影

 JR九州の肥薩線は2020年7月の九州豪雨で甚大な被害を受けた。熊本県南部を流れる球磨川の氾濫で「球磨川第一橋梁(きょうりょう)」「第二球磨川橋梁」が流失したほか、路盤流出なども至る所で起きている。現在も八代─人吉、人吉─吉松間が不通となったままだ。

 同じく熊本県の第三セクター鉄道、くま川鉄道も人吉温泉─肥後西村間が不通となっているが、こちらは26年度上半期中の運転再開が見込まれている。

 一方、肥薩線は被害の度合いが大きく広範囲に及んでおり、復旧はまだ遠い。25年4月1日に熊本県とJR九州が八代─人吉間について最終合意書を交わし、鉄道での復旧を目指すことがようやく確定したところだ。運転再開は33年度ごろを見込む。

被災からもうすぐ5年

 ここまで5年近くかかったのは、鉄道だけが被災したのではなく、球磨川流域をはじめとする集落や道路など、地域住民の生活圏全体が大きな被害を受けたからだ。これらの再建を優先するのは大規模災害後の復旧手順として当然で、さらに河川工事なども先行させなければ、鉄道の復旧はおぼつかない。

 今回、交わされた最終合意書では、復旧工事は25年度から着手する計画となっている。工事そのものは基本的にJR九州が行うが、費用については鉄道軌道整備法に基づく補助制度を最大限活用する。

 当初、JR九州が示した概算は約235億円だが、橋の復旧費用などを国がほぼ負担する案が再提示され、約76億円まで圧縮した。ここから補助制度を使い、国と自治体、JR九州が1/3ずつを負担することになった。JR九州の負担額は約25億円まで軽減したということだ。

 そして、復旧工事の完了後は、JR九州が鉄道用地、鉄道設備などを熊本県側に無償譲渡することになっている。車両はJR九州が保有するものの、線路や駅などの設備は熊本県側から借り受けて営業運転を行う…

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鉄道ライター

1965年、大阪府豊中市生まれ。大阪大学で演劇学を専攻し、劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。出版社勤務を経て97年に独立し、ライターに。2004年頃から鉄道を専門とし、雑誌「鉄道ジャーナル」のメイン記事などを担当した。東日本大震災で被災した鉄道路線の取材を精力的に行うほか、現在もさまざまな媒体に寄稿している。主な著書に「ここがすごい!東京メトロ」(交通新聞社)、「きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)など。