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アラブ首長国連邦で実感「アニメという国際共通語」の可能性

井上伸一郎・作家・プロデューサー
筆者(井上伸一郎氏)とのトークセッションで日本のアニメ聖地(アニメの舞台になった場所)を巡礼した経験談を語るヤスミンさん(写真中央)=撮影・金子隆二(オペラハウス)
筆者(井上伸一郎氏)とのトークセッションで日本のアニメ聖地(アニメの舞台になった場所)を巡礼した経験談を語るヤスミンさん(写真中央)=撮影・金子隆二(オペラハウス)

 5月1日から5日にかけて、アラブ首長国連邦(UAE)の首長国の一つシャルジャにおいて、「シャルジャ・アニメ・カンファレンス」というイベントが開催された。今年で3回目の開催だ。筆者も「日本におけるマンガとアニメの関係」というテーマで講演を求められ、昨年に続き招待された。

 このイベントは、もともと「シャルジャ・チルドレンズ・リーディング・フェスティバル」という児童書の見本市から派生したもの。児童書の見本市としてはアラブ地域最大級のイベントだが、アニメ・カンファレンスは年々その存在感を増している。特に日本製アニメへの関心は強く、今回も多くの日本のアニメ関係者が講演のために招かれた。

脱石油・ガスで「文化」を経済の柱に

 UAEというと石油やガスが経済を支えている印象があるかもしれないが、ドバイなどの首長国で脱石油・ガスの動きが進み、現在ではその依存度は21%程度に過ぎない。今後シャルジャでは「文化」を経済の柱として打ち出す計画があり、アニメもその重要なピースの一つとなる。

 UAEでアニメ熱が高まっている背景に、隣国のサウジアラビアの存在がある。サウジアラビアは近年エンターテインメント施策の方針大転換を行った。2018年に35年の沈黙を破り、首都リヤドで映画館が再オープンした。若い世代にとっては初めての映画館体験だ。それ以前、サウジアラビアの人々は映画を見るために5時間かけて飛行機やクルマを使い、隣国のバーレーンまで通わねばならなかった。

 映画館再開以降、イベントやコンサートなどの開催も一般的になった。その結果、日本アニメの人気も上昇した。「名探偵コナン」などは昔からサウジの人々に愛されてきたが、新作の劇場アニメが公開されることで、さらに人気を集めることとなる。世界初となる「ドラゴンボール」テーマパークの建設も発表された。

 こうしたサウジアラビアの動きに呼応するように、UAEも日…

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作家・プロデューサー

 1959年生まれ。87年、株式会社ザテレビジョン(現KADOKAWA)入社。雑誌編集者、マンガ編集者、アニメ・実写映画のプロデューサーを歴任する。2007年に株式会社角川書店代表取締役社長。19年に株式会社KADOKAWA代表取締役副社長に就任。現在は25年開学のZEN大学客員教授およびコンテンツ産業史アーカイブ研究センター副所長。合同会社ENJYU代表社員。新著に「メディアミックスの悪魔 井上伸一郎のおたく文化史」(星海社新書、2025年3月18日発売)。インスタグラム@inoueenjyu/YouTube番組「アニジャ:I love ANime JApan」を配信中