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「空き家の実家を5年放置」認知症の母の存在と相続登記の壁

元木翼・司法書士法人・行政書士法人ミラシア代表
=Getty Images
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 相続、遺言、認知症対策の専門家としての2000件以上の相談実績のある司法書士、行政書士法人ミラシア代表、元木翼さんの新連載「元木翼の『相続・終活ガイド』」が始まります。具体的なケースごとの問題点やその解決策をわかりやすく解説します。

実家の名義は父のまま

 5年前に父を亡くしたAさん(50代)は、父名義の実家の登記を長く放置していた。法定相続人は、母とAさん(長男)、弟(次男)、妹(長女)の4人。父の死後、母は重度の認知症を患い、実家を離れて施設に入所。家はずっと空き家のままだった。固定資産税や管理の負担もあり、「そろそろ売却したい」と考えるようになった。

 だが、近所の不動産会社に相談すると、実家の名義が父のままでは売却手続きができないとのことだった。まず相続登記を済ませる必要があると知り、ようやく重い腰を上げた。2024年4月から相続登記の義務化が始まったというニュースも後押しとなった。

 ところが、司法書士に相談したところ、大きな問題が明らかになった。母が認知症で判断能力を欠いているため、このままでは「遺産分割協議」ができないという。法定相続人全員で父が残した実家を誰の名義にするのかを協議し、遺産分割協議書に全員が署名・押印しなければならないのだ。

 相続人である母が有効な意思表示を行えなければ、形式的に署名だけしても協議は無効となる。Aさんは「もっと早く登記しておけばよかった……」と悔やむことになった。

相続登記の義務化と“放置のツケ

 筆者は、まずAさんに相続登記の義務化について説明した。24年4月1日以降、不動産を相続した者は、取得を知った日から3年以内に登記しなければならない。正当な理由なく怠れば10万円以下の過料が科される可能性がある。

 これは義務化がスタートする前の相続にもさかのぼって適用されるため、Aさんのように父が亡くなってから年数がたっていても例外ではな…

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司法書士法人・行政書士法人ミラシア代表

 早稲田大学教育学部英語英文学科を卒業し、2010年司法書士・行政書士登録。大手司法書士法人にて支店長などを務め、 17年独立し、司法書士法人・行政書士法人ミラシアを開業。千葉商科大学大学院特別講師。著書に『親の財産を凍結から守る 認知症対策ガイドブック』(日本法令、2021)など。