有事が起きればドルが買われる、そんな常識が揺らいでいる。イラン・イスラエル紛争でも限定的だった「有事のドル買い」。その裏には金や仮想通貨(暗号資産)ビットコインへの資金流入、米政権のドル安志向、そして基軸通貨としての威信の低下がある。だが、ドル安は本当に不可避なのか。市場が語らない「不都合な真実」にも目配りする必要がありそうだ。
揺らぐ「有事のドル買い」神話
「有事のドル買い」。これまで金融市場では当たり前のように語られてきた神話が揺らいでいる。
米軍の空爆により、ひとまず幕引きとなったイラン・イスラエル紛争。市場には緊張が走ったものの、有事のドル買いは極めて限定的だった。ドルの各国通貨に対する強さを示すドルインデックスは、イスラエルがイランに先制攻撃を加えた当初こそ1%程度上昇したが、すぐさま下落に転じ、6月末には年初来安値を記録するなど、「有事のドル買い」どころか、むしろドル安基調の根強さが改めて浮き彫りとなった格好だ。
事実、ドルの保有を避ける動きがあちらこちらで見られるようになってきた。米ドル依存からの脱却を企図する新興国を中心に、金準備を積み上げる動きが継続しているほか、足元では、ドルの代替資産として金やビットコインに資金が流入し、双方とも過去最高値圏にある。
では、なぜ市場参加者はドル買いをちゅうちょするのか。背景には二つの要因がある。
トランプ2.0でかすむドルの権威
一つ目は、トランプ政権のドル安指向だ。トランプ大統領はこれまで繰り返し「米国製造業の復活にはドルの柔軟性が必要だ」と述べ、ドル安による輸出競争力の向上を図る方針を示してきた。また、大統領の経済ブレーンで知られ、昨年、ドル安を通じた経常赤字削減を目指す「マララーゴ合意」を提案したスティーブン・ミラン氏が経済諮問委員会(CEA)の委員長に就任したことから、関税交渉と合わせて各国通貨当局にドル高…
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