Aさん(60代男性)は、最近亡くなった父親から思わぬ土地を相続しました。
それは地方の山林で、Aさん自身には全く心当たりのない場所です。父親は生前、「将来高値で売れる」との甘い話に乗せられ、実際には利用価値の低い山林を高額で買わされていたのです。
いわゆる「原野商法」の被害に遭って取得したその土地は、結局ほとんど価値がなく、買い手も借り手も見つかりません。Aさんは使い道のない土地を抱え、途方に暮れてしまいました。
「土地」だけを手放すことはできない
Aさんは「この土地だけ相続したくない」と考えました。しかし、日本の法律上、相続に際して遺産の一部だけを選んで放棄することはできません。
仮に他にも財産があってそれを受け継ぎたいのなら、この不要な土地も一緒に背負うしかありません。そうすると、Aさんは今後も毎年この土地の固定資産税を支払い続けることになります。
2024年4月から、相続登記(不動産の名義変更)が義務化されました。相続で土地を取得した人は、自分がその不動産の相続人だと知ってから3年以内に登記申請をしなければなりません。
正当な理由なく、定められた期限内に申請しなかった場合、10万円以下の過料を科される可能性があります。つまり「売れない・貸せない・使えない」土地であっても名義を放置できず、自分のものとして登記し、管理する責任を負い続けることになります。
国が引き取ってくれる制度という選択肢
こうした「負動産」 と呼ばれる不要な土地を抱えた相続人を救済するため、23年4月にスタートしたのが「相続土地国庫帰属制度」です。これは一定の要件を満たす土地に限り、国に引き取ってもらえる制度です。
承認されれば所有権が国に移り、以後の管理や固定資産税の負担から解放されます。買い手や借り手がつかない山林や原野など活用に困る土地でも手放せる点は大きなメリットでしょう。実際、25年5月…
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