Kさん(88)は高度成長期に小売業を起こして成功し、バブル期に会社を売却すると、賃貸不動産オーナーに転じ、その後も資産を増やしてきた。80代になってから、銀行からの提案で遺言信託を利用して遺言書を作成したが、当時とは資産内容が変わってきたため、相続対策を見直している。
小さな店からのスタート
事業のスタートは、妻と2人で始めた26平方メートルほどの小さな店だった。モノ不足の時代で、商品を仕入れれば飛ぶように売れ、事業は順調に大きくなった。
バブル期に同業者から買収を持ち掛けられ、夫婦で所有していた株式を売却すると、まとまった資金が手に入った。
後から考えると、このタイミングは絶好だった。
ほどなくしてバブルが崩壊すると、高根の花だったマンションも手の届く水準になった。Kさん夫婦は自宅用のマンションを共有で購入し、さらに夫婦それぞれの名義で賃貸用マンションを一戸ずつ買い足した。
株価も大きく下落したため、銀行株なら安定して心配ないだろうと、夫婦それぞれで投資した。
こうして夫婦で同程度の財産を蓄えることになった。
Kさんは6年ほど前、銀行からの提案で、遺言信託を利用して遺言書を作成した。
夫婦の子は、長男(58)、次男(55)、長女(52)の3人だ。
長男は結婚して女の子が2人いる。自分で始めた事業が順調に推移しており、生活資金の面では全く問題がない。次男は独身で、その点が高齢のKさん夫婦には気がかりではあるが、本人のライフスタイルなのだろうと割り切っている。
長女は結婚して女の子が1人いる。生まれながらに障害があり、Kさん夫婦は「せめて私たちの生きている間に、自分たちの手で…
この記事は有料記事です。
残り1463文字(全文2161文字)







