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関電支援のため?政府が「原発建設に公的融資」なぜなのか

川口雅浩・経済プレミア編集部
関西電力の美浜原発3号機。関電は後継機の建設を検討している=福井県美浜町で2025年3月14日、本社ヘリから
関西電力の美浜原発3号機。関電は後継機の建設を検討している=福井県美浜町で2025年3月14日、本社ヘリから

原発への公的融資どうなる(上)

 脱炭素を名目に、政府が原発などの建設に公的融資を行う仕組みの検討を始めた。民間の金融機関では融資が難しい原発など大型の脱炭素電源の建設に向け、政府が公的機関に財政措置を行い、公的機関が民間金融機関と協調融資をするという。政府はどんな融資を行うつもりなのか。

 経済産業省の資源エネルギー庁は2025年11月11日、経産相の諮問機関「総合資源エネルギー調査会」のワーキンググループ(作業部会)に政府案を示した。原発を念頭に、完成まで長期にわたり大規模な資金を必要とする脱炭素電源について「政府の信用力を活用した融資」を行うことを目指すという。

 原発の建設には1基当たり少なくとも1兆円規模の資金が必要で、完成まで10年以上かかる。フランスで24年9月に稼働したフラマンビル原発は当初計画から12年遅れ、建設費は132億ユーロ(約2兆2000億円)と、当初の4倍に膨らんだ。NPO法人「原子力資料情報室」が各国の実績を基に建設費を計算したところ、大型原発は1基2兆~6兆円、小型モジュール炉と呼ばれる小型原発でも1兆~2兆円かかるという。

 原発は世界的に建設コストが増大し、完成まで想定を超える時間を要するようになっている。このため日本でも大手電力会社が民間の金融機関から融資を受け、原発を建設することが困難になっている。

 これを受け、エネ庁は原則10年以上の長期にわたり大規模な資金を必要とする脱炭素電源について、公的機関が民間の金融機関と協調融資する制度を提案した。

広域機関が融資業務

 新たに融資を行う公的機関とは、電力会社が加盟し、全国の電力需給を調整する国の認可法人「電力広域的運営推進機関(広域機関)」だ。広域機関は2015年、送配電網の広域運用の司令塔として発足した。

 電気事業法は広域機関について「供給能力確保の促進」を業務として行うことができると定めている。このためエネ庁はワーキンググループで「新たな融資制度についても広域機関が担うことが適切ではないか」と理解を求めた。

 広域機関が融資業務を行うため、エネ庁は「広域機関の財政的な基盤を厚くするため国からの財政措置を行う必要がある」と説明した。

 エネ庁は広域機関の融資先として、大手電力の脱炭素電源や送配電網などの建設・整備を想定している。ただし、11月11日のワーキンググループにエネ庁が提出した資料や、委員を務める有識者らと約2時間半にわたった議論の中で、「原発」や「原子力」といった文言は一切出なかった。

 しかし、エネ庁が目指す脱炭素電源の融資先として、原発が念頭にあるのは明らかだ。エネ庁は出力50万キロワット以上など「一定の出力規模以上の設備」で、「長期脱炭素電源オークションの対象電源」を投資対象にする考えを示した。

長期脱炭素電源オークションとは

 長期脱炭素電源オークションとは、原発の場合、…

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経済プレミア編集部

1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。