地球温暖化の「元凶」とされた石炭だが、依然としてコストは圧倒的に低く、また埋蔵量が世界各地に存在するなど、今なお火力発電のエネルギーとして魅力は大きい。そして、トランプ米政権も石炭活用へと大きくカジを切った。
発電用として石炭は圧倒的に低コスト
石炭といえば、18世紀後半の産業革命期の蒸気機関を思い浮かべることが多く、古ぼけた昔のエネルギーというイメージを持つ人は少なくない。加えて、単位熱量当たりの炭酸ガス排出量が天然ガスの2倍程度に達し、地球温暖化の「元凶」とされている。しかし、世界に目を向けると石炭需要は着実に増加を続けており、単位熱量当たりの価格の圧倒的な安さから、火力発電やボイラーの燃料として最もコスト競争力を有している。今後の日本のエネルギーの安定調達を考えるうえでは、こうした現実も直視する必要がある。
英エナジー・インスティテュートの「世界エネルギー統計レビュー」によれば、2024年における世界の石炭消費量は165エクサジュール(エクサは10の18乗)と過去最高を記録し(図1)、25年は各種見通しでもさらに更新が見込まれている。石炭のエネルギー密度は石油のほぼ半分であるため、自動車、航空機などの輸送用燃料としては利用できないが、安価な電力供給を重視する途上国では現在においてもエネルギーの主役である。粗鋼生産でも原料炭と鉄鉱石を高炉で反応させる300年以上も続く製法が今なお最も優れている。
地球温暖化に懐疑的なトランプ米大統領は、「誤った脱炭素政策が米国の石炭産業、石炭火力発電を苦しめ、米国の雇用と経済成長の機会を奪う」と主張している。そのため、今年4月に石炭採掘と石炭火力発電利用を促進する措置に署名し、AI(人工知能)の発達、データセンター(DC)の増設、半導体工場の新設に伴う電力需要の増加に応えるとしている。また、6月には火力発電所が排出する炭酸ガスの回収を義務づけるバイデン政権時代の規制を撤廃する方針を表明した。
さらに、9月にはモンタナ州、ワイオミング州をはじめとした連邦保有地を石炭開発向けに開放することを発表している。トランプ大統領が石油産業に向けて、「Drill Baby Drill」(シェールオイルを「掘って、掘って、掘りまくれ」)と演説し、圧倒的な支持を得たことになぞらえて、米内務省のバーガム長官は「Mine Baby Mine」(石炭を「掘って、掘って、掘りまくれ」)と表明している。米エネルギー省も、石炭火力発電所の再稼働のために6億2500万ドル(約960億円)を投じる。
供給途絶リスク小さく
トランプ大統領は閉鎖を予定している石炭火力発電所の稼働…
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