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ウクライナ和平交渉大詰め「大坂冬の陣」避けたいゼレンスキー氏

会川晴之・毎日新聞客員編集委員
独ベルリンで15日に協議に臨んだウクライナのゼレンスキー大統領(左)と米国の特使ウィットコフ氏=AP
独ベルリンで15日に協議に臨んだウクライナのゼレンスキー大統領(左)と米国の特使ウィットコフ氏=AP

 米国のトランプ大統領が仲介を務めるウクライナ和平協議が大詰めを迎えている。12月15日には独ベルリンで、米大統領特使とウクライナ、欧州各国の首脳が調整に臨んだ。ただ、ウクライナは、和平案はロシアの意向ばかりが反映されているとして大幅修正を求めており、和平実現は見通せない状況にある。

 ノーベル平和賞受賞を熱望するトランプ氏は、一刻も早い成果を望む。戦争を止めるのが最優先で、ロシアに有利な内容であろうと構わないと考えているようだ。

 焦点は、激戦が続くウクライナ東部ドネツク州の扱いにある。ウクライナは現在、約3割を支配下に置くが、米国はロシアの主張に沿ってウクライナに全面撤退を求めている。

 それをのめば、大坂冬の陣で豊臣陣営が破れ、大坂城の外堀を埋められたのと同じ状況になる。ドネツク(外堀)を失えば、ロシアが圧倒的に有利となる。外堀埋め立て後にあった夏の陣で大坂城が陥落したように、ロシアが戦闘を再開すれば首都キーウ(キエフ)まで一気に迫る可能性が出てくる。

 そんな事態は是が非でも避けたいウクライナは、現在の戦闘ラインでの停戦を主張する。欧米諸国から安全保障の協力を得て、ロシアの再侵攻を阻む防波堤を築こうともしている。

 旧ソ連の一角を構成していたウクライナには、1991年の独立後も旧ソ連の核兵器配備が続いていた。だが、核拡散防止を目指す米露からの圧力を受け、ウクライナは核兵器のロシア移送に同意する。その代償として米英露からの安全保障を得た。94年に結んだブダペスト覚書にそれが記された。

 だが、ロシアは2014年にこの…

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毎日新聞客員編集委員

1987年入社。欧州や北米総局長などを経て、2020年から専門編集委員。日米政府が進めたモンゴルへの核廃棄計画の特報で、11年度ボーン・上田記念国際記者賞。連載「核回廊を歩く 日本編」で16年科学ジャーナリスト賞。