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トランプ政権「拡張財政」の末路?社会保険の大幅減か

週刊エコノミスト Online
トランプ米大統領=2025年12月24日、AP
トランプ米大統領=2025年12月24日、AP

 国民の暮らし向きを重視するトランプ政権は、財政拡張の圧力をかけている。

 米国財政の2026年は「アフォーダビリティー(暮らし向き)」がテーマだ。11月の中間選挙に向け、物価高を懸念する有権者の生活実感を改善することが最優先の課題になる。財政に拡張方向の圧力がかかるのは、自然な成り行きである。

 布石は打っている。25年7月に成立した「一つの大きく美しい法(OBBBA)」には、残業収入やサービス業従事者のチップ収入を非課税とするなど、納税者の手取りを増やす施策を埋め込んだ。対象者は26年2月ごろから25年分の税還付を受けられる。減税効果の本格化は26年からだ。

 米政府の26会計年度(25年10月~26年9月)の財政運営は、景気を押し上げる方向に転換しそうだ。25年度は関税引き上げによる税収増に加え、OBBBAに基づく学生ローン支援策の見直しなどの引き締め効果が先行した。26年度は、OBBBAの減税効果による財政赤字の拡大幅が大きく、関税収入の増加による緊縮圧力を上回る見込みだ(図1)。

 OBBBAが盛り込んだ内容より拡張的な財政運営となる可能性もある。トランプ大統領は関税収入の還元を理由に挙げ、1人当たり2000ドル(約30万円)の税還付を提案している。米エール大学の試算によれば、還付総額は1年間で約4500億ドルと、トランプ政権が関税政策で26年度に見込む税収(約3200億ドル)を上回る。

 関税政策の変化も潜在的な拡張財政要因だ。トランプ政権が25年に引き上げた関税のうち、各国に課した「相互関税」など、税収増の半分ほどに当たる部分が米最高裁で争われている。関税が違法と判断された場合、その部分の打ち切りや、既に徴収した分の還付が求められかねない。

 トランプ政権にとって最高裁の違法判決は、関税政策を調整する好機になるかもしれない。25年11月には、アフォーダビリティーに配慮して食料品や農産品の関税を引き下げている。最高裁が関税撤回を迫った場合でも、トランプ政権は他の根拠法に基づく関税に切り替えるとの見方が根強いが、移行に必要な時間を考えれば、短期的には関税収入が減少する局面もありそうだ。新たな関税も、これまでより低い税率としたり、その税収を納税者に還付する性格を強めようとしたりする可能性があるだろう。

リスクは債務増以外にも

 拡張財政にはリスクが伴う。財政赤字の拡大は有権者のアフォーダビリティーを改善するどころか、インフレ圧力を高めかねない。

 一層の拡張財政は、歴史的な高水準に近づきつつある米国の債務残高をさらに増やすことにもつながる。超党派のシンクタンク「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」によれば、OBBBAなどの財政政策を織り込むと、債務残高は35年度までに国内総生産(GDP)の120%に上昇する(図2)。一層の拡張財政がない場合ですら、第二次世界大戦直…

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