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支持率低下のトランプ氏 逆風の中間選挙前に挑むインフレ対策

週刊エコノミスト Online
トランプ米大統領=2025年10月27日(代表撮影)
トランプ米大統領=2025年10月27日(代表撮影)

 米国民が政権与党に審判を下す中間選挙が2026年11月に迫る。トランプ政権をどう変えるのか。

 米中間選挙に大きな影響を及ぼすのは、物価高で苦しむ国民の声だろう。米調査会社ギャラップによる25年11月の世論調査によれば、トランプ米大統領の支持率は共和党支持層で84%だった(図)。25年1月に就任してから最低で、同10月調査から7ポイントも下がった。

 民意が象徴的に表れたのが25年11月4日投開票のニュージャージー、バージニアの両州知事選とニューヨーク(NY)市長選だ。いずれも民主党候補が勝利した。とりわけ注目度が高かったNY市長選に関する米CBSテレビの出口調査によると、「最重要課題は生活費」とした人の投票先は、民主党候補のマムダニ氏が63%と圧倒的で、無所属のクオモ前NY州知事は27%、共和党候補は6%にすぎなかった。マムダニ氏当選は、生活苦を訴える人がそれだけ多いことの表れだ。実際、NY市民の相対的貧困率は24%に上り、ワンルームアパートの家賃中央値は過去5年で25%も上昇したという。

 自動車社会の米国で国民生活への影響が特に大きいのは、ガソリン価格だ。国民生活が苦しい中でガソリン価格が下がれば、体感景気は改善する。トランプ大統領がウクライナ戦争の早期終結に意欲を見せるのは、ノーベル平和賞を受賞したいという理由だけではなく、戦争終結が物価や原油価格を押し下げるという計算をしても不思議ではない。つまり、石油生産量が多いロシアと何らかの合意に達すれば、米国エネルギー戦略にプラスと考え、ロシアに融和的なのではないか。

 ただし、石油会社にとっては、原油価格が安くなりすぎると採算割れし、生産意欲が減退してしまう。トランプ氏はエネルギー業界の支持を得て大統領選を戦ってきたので、原油安は痛しかゆしだろう。とはいえ、少なくとも中間選挙に関しては、エネルギー業界への配慮よりもっと安いガソリンや物価を待望する国民への配慮のほうが大きいのではないか。

敗北なら弾劾裁判も

 NY市長選について、もう一つ指摘したいのは、有権者の「反エリート」意識だ。落選したクオモ氏は検察出身で若くしてクリントン政権の高官になり、NY州知事を10年間務めた。クオモ氏側に付いたのは、民主党のジェフリーズ下院院内総務やシューマー上院院内総務といった主流派だった。民意は「エリートが市長になっても、苦境は変わらない」「新しい空気が必要」だったのだろう。マムダニ氏は民主社会主義者を自称するイスラム教徒。毛色が違う同氏に民意が向かったと考えられる。

 過去の大統領選にさかのぼれば、16年も24年も「エリートに任せても生活苦は改善しない」という民意がトランプ氏を勝たせたといえるだろう。彼のような極端な人でなければ、エリートが構築した仕組みは変えられないという感覚だ。そう考えると、トランプ氏は物価高を抑え、生活苦を改善する政策に力を入れる以外に選択はないと思う。

 4年ごとの中間選挙は、上院議員の3分の1と下院議員の全員を改選する。トランプ氏が国民生活を改善できなければ、中間選挙で少なくとも下院の過半数を失う可能…

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