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中国の「不動産不況」年金波及で地方発の社会不安も

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=Getty Images
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 中国の不動産不況は長期化している。日本の「失われた30年」より深刻になる可能性がある。

 中国経済はコロナ禍の後、一向に回復する兆しがない。実質国内総生産(GDP)成長率は2019年まで6%を超えていたが、コロナ禍が終息した23年以降は5%程度に下がった(図)。もっとも、これは中国政府の公式統計に基づく数値で、実際にはもっと低いと見られる。

 GDPの3割に上るとされるほど大きいのは、不動産投資に建設資材、家電、家具などを加えた関連投資額だ。中国経済を支える背骨となった不動産のバブル崩壊を象徴する出来事がコロナ禍の21年にあった。不動産大手の中国恒大集団が米ドル建て社債の利払いに窮し、デフォルト(債務不履行)したのだ。同社はその前年、売上高が中国不動産2位だった。上場する香港証券取引所は24年に恒大集団株の取引を停止し、25年8月に上場を廃止。同社は正式に倒産した。問題はこれが「バブル崩壊の終わり」ではなく、不動産不況の長期化を意味すると見られることだ。

 中国国家統計局が発表した25年1〜10月の不動産投資は前年同期比14.7%減と大きく落ち込んだ。大幅減の主因はこれまでの過剰投資による不動産在庫が積み重なっていることだ。若年層失業率が高止まりし、新規需要が生まれにくいことも、市況の改善を妨げている。

 22年10月以後、中国の卸売物価指数(PPI)は一貫して前月を下回っていることから、すでにデフレーションに転落したと見られる。このままだと、中国経済はバブル崩壊後の日本経済と同じように「失われた30年」に突入するのか。結論を先取りすれば、中国のバブル崩壊は日本より深刻になる可能性がある。日本では1997〜98年、バブル崩壊が金融システムに飛び火して大手金融機関が相次いで倒産したが、政府が制御できなくなるほどの混乱は起きなかった。

誰も分からない地方債務

 一方、中国では不動産バブルの崩壊によって金融機関のバランスシートが壊れる懸念がある。ただ、政府が銀行のほとんどを所有する中国では、政府が最後まで保護すると考えられることから、国有銀行が倒産する可能性は低い。金融システムの不安より深刻なのは地方政府の債務問題である。

 中国憲法10条は「都市の土地は国家所有に属する」と定める。中央政府が90年に土地使用権(定期借地権)を個人や企業に払い下げる制度を整えたことで、各地の地方政府は巨大な財源を手に入れた。地方政府は土地使用権の収入で都市インフラを整備するとともに、資金を借り入れた。貸借対照表に記載しない債務も多いと見られるが、債務総額は誰にも分からない。

 中国の公的年金は日本の国民年金とは異なり、省、自治区、北京や上海などの直轄市の政府がそれぞれ運営する。被保険者と企業の負担分のほか、地方政府が一定額を補助する仕組みだ。しかし、土地使用権収入の減少に直面する地方政府には年金基金を補助する余力が乏しくなった。この傾向が続くと、経済発展が遅れた地方に住む年金加入者の受取額が減る恐れがある。現実となれば、日本では起きなかった規模の社会不安を引き起こす可能性があると考えるべ…

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