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インフレ・賃上げから「置いてきぼり」退職金制度の課題

渡辺精一・経済プレミア編集部
=Getty Images
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 春闘は賃上げの勢いが焦点だ。賃金伸び率がインフレ率を上回り、実質プラスになるかどうかが注目される。だが、この動きに取り残されているものがある。退職一時金や企業年金などの「退職金制度」だ。インフレでも給付額が変わらなければ、実質価値が目減りし、老後の備えは弱くなる。企業にとって、退職金のインフレ対応は次のテーマに浮上している。

確定給付年金はインフレに弱い

 退職金制度は、定年、退職、解雇、死亡などで雇用関係が終わったとき、従業員にまとまった額を給付する仕組み。従業員の老後や生活保障を支援するのが目的で、一般に勤続年数や役職などに応じて支給額が決まる。企業にとっては、福利厚生として従業員の定着やモチベーション向上の狙いがある。

 給付の形態には、退職一時金と企業年金とがある。

 一時金は、退職時に一括で払う。企業が独自に積み立てや準備をする「社内準備型」のほか、中小企業向けには、国の援助で企業が掛け金を積み立てる中小企業退職金共済制度(中退共)もある。

 企業年金は、将来の給付額があらかじめ決まり、企業が積立金を管理している確定給付年金(DB)と、企業が掛け金を拠出し、加入者(従業員)が自己責任で運用する確定拠出年金(DC)とがある。

 厚生労働省の「2023年就労条件総合調査」によると、退職金制度がある企業は4社に3社で、企業規模が大きいほど導入率は高い。制度がある企業では、一時金のみが7割、企業年金のみが1割、一時金と企業年金の併用が2割の構成だ。

 大卒者が定年退職(勤続35年以上)した場合の平均給付額は、一時金のみでは1822万円、一時金・年金の併用では2283万円だ。

 これは税…

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経済プレミア編集部

1963年生まれ。一橋大学社会学部卒、86年毎日新聞社入社。大阪社会部・経済部、エコノミスト編集次長、川崎支局長などを経て、2014年から生活報道部で生活経済専門記者。18年4月から現職。ファイナンシャルプランナー資格(CFP認定者、1級FP技能士)も保有。