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さらば円高?日本がはまる「円安スパイラル」二つの要因

週刊エコノミスト Online
 
 

 日本は名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利がマイナスの状態にあり、円の価値が実質的に目減りを続けている。

 明治時代に日本の通貨が「円」になった時のドル・円レートは1ドル=1円だった。しかし、第二次世界大戦前後に日本の物価が高騰(通貨価値は暴落)したこともあって、占領軍当局は1949年、ドル・円レートを1ドル=360円と定めた。戦後しばらくは世界の主要国の為替相場もドルとペッグ(くぎ付け)する固定相場制に近いものだったが、73年のニクソン・ショックを経て、主要国は変動相場制に移行した。

 ドル・円相場はファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)に沿って動くようになり、比較的急な円高基調が続き、95年には1ドル=79円台に達した。主な要因を端的に挙げれば、日本が輸出を増やして多額の貿易黒字を稼ぐ一方、資金が対外投資などで国外に流れる還流メカニズムが十分に整っていなかったことが大きかったのではないか。その後、急激な円高の流れは止まったが、2008年のリーマン・ショック後、円高が加速して11年には1ドル=75円台まで進んだ(図1)。

 12年に返り咲いた安倍晋三首相は極端な金融緩和政策と積極的な財政政策からなる「アベノミクス」を始動した。これを背景にして円高の流れは止まり、円安基調が始まった。ちょうどそのころから製造業を中心とする日本企業の対外投資が急増するようになったことも円安を助長した。11年の東日本大震災も対外投資が加速する一因となった可能性がある。

 14~21年ごろのドル・円相場はおおむね1ドル=100~120円の範囲内で上下動したが、22年以降は円安が急激に進んだ。昨年のドル・円相場はさほど円安が進んでいないように見えるのは、ドルも弱かったことが大きい。ユーロ、豪ドル、スイス・フラン、中国・人民元などの通貨に対し、歴史的な水準まで円安が進んでいる。

 22年以降、円安が急激に進んだ背景は二つあると考えられる。一つは、円を保有していると、その価値が実質的に目減りするようになったことだ。もう一つは、日本から対外資金の流出が止められなくなっていることだ。

遅れた日銀の利上げ

 円の価値が実質的に目減りするようになったのは、20年から世界に蔓延(まんえん)した新型コロナウイルス感染症と、ロシアが22年にウクライナに侵攻したことがきっかけだ。世界中の政府はコロナ禍の対応策として国債を増発し、中央銀行に購入させた。政府が実質的に国民にお金を配ったことになる。お金の数量が増えれば価値が下がる。これはモノやサービスの価格が上がることと同じ意味だ。

 ロシアによるウクライナ侵攻の直後から原油、天然ガス…

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