今年1月の実質賃金はプラス化したが、中東紛争が長期化すれば物価上昇ペースが加速し、実質賃金が再びマイナスとなる可能性が高くなる。
名目賃金(現金給与総額)を消費者物価(持ち家の帰属家賃を除く総合)で割り引いた日本の実質賃金は、2026年1月の速報値で前年同月比1.4%と13カ月ぶりのプラスとなった。また、現金給与総額よりも安定的な動きをする「きまって支給される給与(所定内給与+所定外給与)」は前年同月比1.3%と22年1月以来、4年ぶりのプラスとなった。
1月は名目賃金の伸びが12月の前年同月比2.4%から同3.0%へ高まったことに加え、ガソリン暫定税率廃止の影響などから、消費者物価が12月の前年同月比2.4%から同1.7%へ上昇率が縮小したことが実質賃金を押し上げた。しかし、実質賃金は22年から25年の間に5%落ち込んでおり、これを取り戻すまでには時間がかかりそうだ。
実質賃金の上昇が持続的・安定的なものとなるためには、まず26年の春闘賃上げ率が高水準を維持するかが鍵となる。連合の「26春季生活闘争 第2回回答集計結果」によれば、26年の平均賃上げ率は5.12%となった。前年を若干下回るものの、3年連続の5%台の高水準は確保できそうな状況だ。筆者は26年春闘の賃上げ率(連合ベース)を5.20%(25年は5.25%)と予想している。
問題は、米国、イスラエルによるイラン攻撃をきっかけとした原油価格の高騰によって、物価の上振れリスクが高まっていることだ。政府はガソリン価格を1リットル=170円程度に抑制するための対策を講じることとした。しかし、原油価格の上昇は直接的な影響を受ける石油製品以外にも、燃料費や物流費の上昇を通じてさまざまな製品の価格上昇をもたらす。
中東紛争が長期化すれば、物価上昇ペースの加速を主因として実質賃金上昇率が再びマイナスとなる可能性が高くなる。
デフレ長期化で伸び悩み
近年の実質賃金の減少は主として物価高によるものだが、日本はデフレ期を含め長期にわたり賃金の低迷が続いてきた。
G7(主要7カ国)各国について、1990年を起点とした24年の名目賃金の水準を比較すると、日本以外の国は2~3倍程度の水準となっているのに対し、日本は90年比で8.8%上昇と非常に低い伸びにとどまっている。日本はデフレが長期化したことも名目賃金伸び悩みの一因となっている。物価上昇率で割り引いた実質賃金は0.8%上昇と、イタリア(1.6%下落)を上回るなど各国との差は縮小するが、それでも日本が主要各国と比べて賃金が低迷していることに変わりはない(図1)。
実質賃金低迷の背景には、労働生産性の伸び悩みがあると指摘されることが多い。しかし、G7各国の労働生産性(時間当たり)の推移を確認すると、日本は90年から24年までの34年間で労働生産性は約50%高まっている。米国、英国、ドイツを下回っているものの、フランス、カナダ、イタリアを上回っている(図2)。労働生産性の低迷が必ずしも実質賃金伸び悩みの主因とはいえない。
日本の賃金が長期にわたって低迷している原因は、労働生産性向上の中身にある。労働生産性(時間当たり)は「付加価値(実質GDP=国内総生産)÷労働投入量(就業者数×労働時間)」で表される。労働生産性を高めるためには、①分子の付加価値を増やす、②分母の労働投入量を減らす──という二つの方法がある。
ここで、労働生産性の内訳をみると、日本は経…
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