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「南鳥島レアアース」は商用化に10年超?戦略不足の大問題

週刊エコノミスト Online
南鳥島近海の深海で2019年に採取されたレアアースを含む泥試料の一部=海洋研究開発機構で
南鳥島近海の深海で2019年に採取されたレアアースを含む泥試料の一部=海洋研究開発機構で

 高市早苗政権が掲げる17の戦略分野のうち、最も関心が高まっている一つが「重要鉱物」だ。中国依存の解消が急がれるものの道のりは遠い。

 高市政権の日本成長戦略会議は戦略17分野を発表し、その一つに「マテリアル(重要鉱物・部素材)」を指定した。重要鉱物の中でもとりわけ注目されるのはレアアース(希土類)だ。永久磁石に不可欠なネオジムなどの元素を含み、電気自動車(EV)モーターなどさまざまな製品で欠かせない。

 レアアースの供給は中国からの輸入に大きく依存している。2025年11月、台湾有事を巡る高市首相の発言を契機として日中関係が悪化した。中国によるレアアースの対日輸出規制強化が意識されたことで、供給不安への懸念が一気に高まっている。

商用化に10年超

 これに対応するため、レアアースの確保に向けた政策が強化されているが、中でも南鳥島周辺海域におけるレアアース開発が大きな注目を集めている。水深約6000メートルの海底に存在するレアアース泥の採取試験が進められ、26年2月には世界で初めて数日間にわたる連続採取に成功した。これで、高市首相は衆院選の街頭演説で「日本は今の世代も次の世代もレアアースには困らない」と述べた。

 もっとも、この採取は慎重に評価する必要がある。南鳥島開発は潜在的に大きな戦略的価値を持つものの商業化には時間がかかるため、当面の供給不安に対する即効策とはならない。

 また、26年3月の日米首脳会談に合わせ、日米は南鳥島開発に加え、レアアース以外の重要鉱物も含めたサプライチェーン強化のための複数の協力プロジェクトを提示した。操業時期が未定など不確実性の高いプロジェクトも多いが、そこでは銅、リチウム、ニッケル、黒鉛(グラファイト)など日本の製造業に不可欠で、中国への依存が高い鉱物などが幅広く対象とされた(表)。

 この点は重要でありレアアースだけに注目するのではなく、重要鉱物全体を視野に入れた戦略が求められる。南鳥島への過度な期待やレアアース偏重の議論は問題の本質を見誤らせる可能性がある。

 現在の日本における重要鉱物の安定供給に向けた政策には大きく二つの課題がある。第一は、時間軸を踏まえた戦略を優先できていない点だ。専門家からは、南鳥島のレアアースの商業化には10年以上を要するとの指摘もある。短期的な供給リスクへの対応には、より現実的な手段を優先する必要がある。

 具体的には、備蓄の積み増しで供給不足への耐性を高めるとともに、有志国との連携を前提としたサプライチェーンの多角化を優先して進めることだ。既に日本はエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じて豪州、南米、アフリカなどの鉱…

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