中東危機により、再生可能エネルギーは気候変動対策から、エネルギー安全保障の中核要素に変化しつつある。
イラン戦争によるホルムズ海峡の封鎖で、原油の供給途絶と価格高騰が起き、世界経済が混乱に陥っている。戦闘で損傷を受けたペルシャ湾岸のエネルギー関連施設は、生産能力の復旧に向けて「全治5年」を要するという。今後の推移により、原油価格の高騰はさらに長期化し、常態化する恐れもある。
このショックを機に、世界中のメディアや専門家の話題となっているテーマがある。「エネルギー安全保障としての再生可能エネルギー」である。今回の原油危機は、中東にエネルギーを依存し過ぎることの危険性を改めてあぶり出した。日本の原油輸入の中東依存度は、実に約95%にも上る。
原油供給が途絶する事態になって世界中が覚醒し、「エネルギー主権」が議論され始めている。「中東依存を脱却し、自国でエネルギーを生産・調達し、価格をコントロールする力を取り戻す。そのためには、何をすべきか」。この問いに、各国の専門家が真剣に向き合っている。彼らが一致して予測するのが、再エネシフトの加速化だ。
実際、3月中旬に開催されたASEAN(東南アジア諸国連合)経済相会合では、エネルギー安全保障のため「再エネ移行を加速する」との共同声明が採択された。
1970年代の石油ショックは化石燃料に代わる選択肢がほとんどなく、省エネをするほかなかった。だが現在、再エネシフトという、もう一つ有力な選択肢がある。再エネの強みは、どの国にとっても国産資源であり、燃料費がゼロになる点だ。
燃料で国富34兆円流出
国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界の発電量に占める再エネは2025年に石炭火力を上回った(図1)。今後も、再エネは30年まで平均8.4%の伸び率で力強く成長する見込みとなっている。とくに太陽光発電は強力で、発電電力量を毎年、平均600テラワット時(日本の年間電力消費量の約6割に相当する規模)以上拡大し続け、比率でみて約8%(25年)から15%(30年)へと、ほぼ倍増するという。
英エネルギー政策シンクタンク、エンバーによれば、これは25年にホルムズ海峡を経由して輸出された液化天然ガス(LNG)の総量を投入して可能になるガス火力発電量に匹敵する規模である。
原油価格の高騰と、それに連動する化石燃料全般の価格上昇は、再エネの価格優位性を高める。再エネシフトは、IEAの予測以上に加速することになるだろう。
再エネシフトは、エネルギー安全保障だけでなく、経済安全保障に資する。これまで再エネは、主として気候変動対策の視点から論じられ、経済安全保障の視点は欠如…
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