児童福祉司の青山さくらさんが、児童相談所(児相)や子ども・子育て支援の日常とそこで働く人の思いをつづる連載「ジソウのお仕事」。今回は、小学6年生で命を絶った女の子に対し、「何かできなかったのか」と悔やむ児童福祉司が登場します。
踏み込めぬ母との対話
小学6年生の女の子、Jちゃんが自死した。
児相や子ども家庭課が2年ほど関わってきたこともあり、職員はみなショックで、気落ちして涙ぐむ人もいた。職場は重苦しい空気に包まれた。
「なぜ……?」
Jちゃんの面影を追いながら、「何か、もっとできることがあったんじゃないか」と思ってしまう。
私は、Jちゃんとは直接会ったことはないけれど、子ども家庭課のMさんと母の面接に同席したことがある。母は、話し出すと止まらない人で、けれどなかなか「本心を明かせない人」だった。お母さんの脈絡のない話にイライラしてしまうというMさんからの依頼で、私が中和させるような役回りで同席したのだった。
その日も「ともかく娘のことが心配なので聞いてほしい」と電話がかかってきて、Mさんと一緒に「2時間コースかな」と覚悟しながら面接室に入った。
母はいきなり、「海外留学する前の私は……」と、自身の20代を振り返って脈略なくしゃべり始めた。「私、じつはアイドルだったんです」と長い話の中で2回同じことを言った。なかなかJちゃんの話にならないことに、私も内心、面倒くさいお母さんだなと思った。今から思えば、そういうこちらの気持ちが母に伝わっていたのかもしれない。
Jちゃんは、外国にルーツがあり、見た目が明らかに「日本人離れ」していた。母は、そのことには触れようとせず、Jちゃんの一重まぶたと太めの体形、不登校、引きこもりが悩みだと言った。
希望校だった中学の推薦入試に失敗し、Jちゃんの引きこもりがはじまった。すべてのことにやる気をなくし、部屋にこもったまま、食事も取ろうとしない、入浴も着替えも嫌がるようになって、母と話したがらないことをなんとかしたい、と言った。
Mさんは、「家庭訪問したい。Jちゃんと会わせてほしい」となんども母に提案したが、「今はいいです、あの子を刺激したくないから、そっとしておいてください……」と拒否された。子どもを専門に診ている精神科クリニックを紹介しても、「精神病院に通うなんて世間体が悪い」と拒んだ。
Mさんが踏み込んで話をしようとしたが、…
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