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がん疑いの高齢の父と同居 コロナ感染を防ぐため私が心がけたこと

金子至寿佳・日本赤十字社 和歌山医療センター 糖尿病・内分泌内科部長

 新型コロナウイルスの流行下では、感染者が少ない地方から、感染者が多い都市部への移動に抵抗感のある高齢者は多いことでしょう。しかし、病気の検査や治療のため、都市部の病院にどうしても行かなければならない高齢者もまた少なくないと思われます。高齢者が病気を抱えて感染すれば、重症化するリスクがあります。コロナの流行がなかなか収まらない中、いかにコロナ感染を防ぎながら、検査や治療をすればいいのか。80歳半ばでがんの再発を疑われた父が、田舎から出てきて大阪に住む私と同居したケースを紹介します。

右肺に「影」

 新型コロナウイルスの感染「第6波」が落ち着いた今年4月末。86歳の父が発熱し、肺のコンピューター断層撮影(CT)検査を受けたところ、右肺の下部に「影」が見つかり、主治医から肺がんの再発を疑われました。

 父は8年前の78歳の時に、早期の肺がん手術を、私が勤めるこの高槻赤十字病院で受けました。その後は年に1~2回、大阪に定期観察のための検査に来る以外、父はゆったりと三重県の都市部から離れた田舎で暮らしていました。

 2020年の春にコロナが猛威を振るい始めてからは、経過観察の検査は、父が暮らす田舎の家の近くの病院に受け入れていただきました。コロナで「3密」を避けるよう言われていましたが、父は「75歳以上の高齢者は毎日動かないと筋力が急激に落ちて立てなくなる」といい、散歩を続けてうまくコロナ禍をやり過ごしていました。20年の冬以降も自宅横の畑で趣味の野菜作りと庭木の手入れを毎日楽しむなど、自分のペースを崩さず暮らしていました。

 実際、高齢者が自宅に閉じこもり、動かないと体や頭の働きが低下します。2週間の寝たきりで失う筋肉量は、7年間に失われる量に匹敵するとも言われています。日本老年医学会も、歩くことや身の回りのことなど生活動作が行いにくくなったり、疲れやすくなったりして、フレイル(虚弱)が進むと警鐘を鳴らしています。高齢者は、コロナだからといって家に閉じこもってばかりいては危険です。

その「塊」、本当にがん?

 肺の影について、地元で受けた気管支鏡を使った検査では悪性は見つからず、放射性物質を含む薬剤を使ってがんかどうかを調べる陽電子放射断層撮影(PET)-CT検査を受けることとなりました。検査の結果では、右の肺の影はがんを示す様子はありませんでした。一方で、症状はまったくない腰椎(ようつい)の横のリンパ節に転移の疑いがあることが判明しました。

 この時点で、父はまだ「腫瘍(細胞の塊)」を指摘されただけでした。しかし、父は「腫瘍=がん」と結びつけて、「もう長生きした」「同級生もたくさん逝っている」などと言い、生きることを半ばあきらめかけているようでした。

 ここで注意してほしい…

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日本赤十字社 和歌山医療センター 糖尿病・内分泌内科部長

かねこ・しずか 三重県出身。医学博士。糖尿病医療に長く携わる。日本糖尿病学会がまとめた「第4次 対糖尿病5カ年計画」の作成委員も務めた。日本内科学会認定医及び内科専門医・指導医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医・指導医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医・指導医、日本老年病学会認定老年病専門医・指導医。インスリンやインクレチン治療薬研究に関する論文を多数執筆。2010年ごろから、糖尿病診療のかたわら子どもへの健康教育の充実を目指す活動を始め、2015年からは小中学校で出前授業や大人向けの健康講座を展開している。