ジソウのお仕事 フォロー

両親の離婚後、ジソウに保護を求めた子どもが本当に望んだことは?

青山さくら・児童相談支援専門職員
 
 

 児童福祉司の青山さくらさんが、児童相談所(児相)や子ども・子育て支援の日常とそこで働く人の思いをつづる連載「ジソウのお仕事」。今回は、両親が離婚後、父親と暮らしている女子中学生が登場します。ジソウに「保護してほしい」と電話してきた彼女を、今は切なく思うと言う青山さん。その理由とは――。

虐待の事実は「ない」と答えた父と娘

 父母間の「高葛藤(こうかっとう=離婚でもめている状態)」に子どもが巻き込まれて、児相が介入するようなケースはよくある。

 私が印象に残っているのは、当時、中学2年生だったKさんのこと。思ったことはハッキリしゃべる、きりっとした目の利発そうな女の子だった。

 Kさんは、父と暮らしていた。父母は、Kさんが10歳のころに離婚。親権は父になった。父は、大企業の役職にある人で、仕事が忙しく、毎日帰りが遅いため、近所に住んでいる父方の祖母がKさんの面倒をずっと見てくれていた。

 その祖母が前年に他界。そのころから、離婚した母から「Kが父から虐待を受けている。食事も与えられていない。父から一緒に入浴するよう強要されている」と児相に何度も通告が入るようになった。

 児相はその都度、父子と面接し、「お風呂には別々に入っているし、父の帰宅は遅いけど冷蔵庫にはいっぱい食べ物がある」と、口をそろえて虐待の事実は「ない」と答えている。

 父は、母とKさんを会わせないようにしていた。離婚調停では「面会交流を認める」となったものの、「父が必要と認めたとき」と母との間で取り決めたらしい。だが母は、父子宅から徒歩10分圏内に住んでいて、Kさんとは時々、道でばったり会うとか、コンビニで遭遇して、「元気?」と言葉を交わすこともあったようだった。

 母いわく、Kさんと会うたび、…

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児童相談支援専門職員

「青山さくら」はペンネーム。複数の児童相談所で児童福祉司として勤務した後退職し、現在は自治体などで子ども虐待関連の仕事をしている。「ジソウのお仕事」は隔月刊誌「くらしと教育をつなぐWe」(フェミックス)で2009年4月から連載。過去の連載の一部に、川松亮・明星大学常勤教授の解説を加えた「ジソウのお仕事―50の物語(ショートストーリー)で考える子ども虐待と児童相談所」(フェミックス)を20年1月刊行。【データ改訂版】を2021年3月に発行した。絵・中畝治子