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難聴放置で認知症リスクも 補聴器が普及しない日本ならではの事情

 難聴になると生活が不自由になるだけでなく、認知症や抑うつの発症リスクにもなることを知っていますか。それを防ぐには補聴器の活用が欠かせないですが、日本の所有率は海外に比べて著しく低いそうです。なぜ普及しないのか。耳鼻咽喉(いんこう)科学が専門の東海大医学部の和佐野浩一郎准教授に聞くと、日本ならではの「事情」があるそうです。【聞き手・渡辺諒】

補聴器所有率 日本わずか15%

 ――欧州各国や中韓など世界16カ国が進める国際調査の一環として、日本人1万4061人を対象にした「JapanTrak(ジャパントラック)2022」が今年1月にまとまりました。結果の概要を教えてください。

 ◆一般社団法人「日本補聴器工業会」などが実施した調査です。その結果は、聞こえにくさを自覚している人の割合が10%と、16カ国中9位でしたが各国ほぼ横並びの状況でした。年代別には、75歳以上が34.4%▽65~74歳が14.9%▽55~64歳が8.9%――などでした。一方、聞こえにくさを自覚している人のうち、補聴器を所有している人の割合は15.2%と15位でした。欧州各国などの所有率は3~5割で、日本の低さが際立っています。

 ――理由は何でしょうか。

 ◆一つ目の理由は受診率の低さです。日本では聞こえにくさを感じても「年のせいだろう」と耳鼻科を受診する人が少ないです。調査結果でも、日本では受診する人は38%に過ぎず、フランスの81%、ドイツの81%、英国の70%と比べて大きな差があります。

 二つ目は、受診しても補聴器を勧める医師が少ないという点です。「病気ではないので様子を見ましょう」などと言ったり、そもそも耳鼻科でも「聞こえ」を専門にする医師が少なかったりするためです。日本では受診したとしても4割弱しか補聴器の所有につながっていません。

 三つ目は、補聴器への満足度が低く、口コミで所有者が広がらないという点です。補聴器はその人に合わせた細かな調整を続けていく必要があります。購入してそれで終わりではなく、単純に聞きたい音を大きくすれば良いというものではありません。調整が不十分なため、日本では補聴器を所持している中で5割の人しか満足しておらず、16カ国中最低でした。

難聴あると認知症リスク1.9倍

 ――難聴を放置しておくとどんなリスクがあるのでしょうか。

 ◆認知症や抑うつ症状、睡眠障害を引き起こすリスクがあります。英ロンドン大などが2020年、英医学誌ランセットで公表した研究によると…

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