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肥満している糖尿病患者 治療や減量の方法は 

矢部大介・岐阜大学糖尿病・内分泌代謝内科学教授
 
 

 昨年秋、日本糖尿病学会が2型糖尿病の治療アルゴリズム(治療手順)を発表しました。さまざまなメカニズムで血糖値を改善する薬をどのように使い分けるか、その方針をまとめたものです。この使い分けは、治療を受ける方々はもちろんのこと、糖尿病診療を専門にしない医師にとっても悩ましい問題です。従来日本人を含めアジア人は、さほど太っていなくても糖尿病を発症することが広く知られています。実際、私のところに来られる、糖尿病がある人は、BMI(体格指数=体重<kg>÷身長<m>÷身長<m>。18.5~25が普通体重)が25程度までの方が多く、そのような人はインスリンを作る力が弱いので、これを是正する薬をお勧めします。一方、糖尿病の治療に来られる方で若い人たちの中には、BMIが25以上の肥満の方が増えていて、BMIが35を超える方も……。このような人の場合、薬はもちろん、食事や運動をはじめ、治療を進めるうえで注意する点が異なってきます。今回は、若年層で増えている、肥満を伴う糖尿病について考えてみたいと思います。

BMI25以上が「肥満」、健康障害もあると「肥満症」

 世界保健機関(WHO)の国際基準は、BMI30以上を「肥満」と位置づけ、25以上30未満を肥満と適正体重の間の「過体重」としています。

 しかし日本では、BMI25以上でも肥満に関連する糖尿病などの疾患が多いため、日本肥満学会はWHOの基準に比べて1段階低いBMI25からを「肥満」と定義しています。さらに、BMI35以上を「高度肥満」と定義し、薬物や外科手術で肥満を治療することも考えられるとしています。

 そして「肥満に加えて糖尿病などの健康障害を生じている」もしくは「こうした健康障害を生じるリスクが高まる内臓脂肪蓄積がある」場合を、健康障害を改善するためにも医学的に減量が望ましいとして「肥満症」と定義しています。

 BMIが大きくなると心筋梗塞(こうそく)や脳卒中などによる死亡リスクが高まります。滋賀県医師会の実態調査によると、50歳未満で糖尿病がある人のうち、実に10%程度がBMI35超です。35超の「高度肥満」の人は、糖尿病はもちろん、脂質異常症や高血圧、睡眠時無呼吸症、変形性関節症などさまざまな健康障害を合併することが多く、医療費も高額になりがちです。若い世代で高度肥満を伴う糖尿病が…

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岐阜大学糖尿病・内分泌代謝内科学教授

やべ・だいすけ 1973年生まれ。98年京都大学医学部卒業、2003年テキサス大学大学院修了。関西電力病院糖尿病・内分泌・代謝センター部長、関西電力医学研究所副所長、京都大学医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学特定准教授などを歴任し、18年から岐阜大学医学系研究科糖尿病・内分泌代謝内科学、膠原病・免疫内科学教授。岐阜大学病院では副病院長や医療情報部長、国際医療センター長を務める。 糖尿病や肥満症、栄養が専門。糖尿病や肥満症の予防、治療として注目される「食べる順番」や食習慣と薬物療法の関係性など、食事療法を中心に臨床研究を展開する。血糖値をコントロールするインスリンを分泌する膵ベータ細胞、インスリン分泌を促す「インクレチン」という物質の基礎研究にも従事。日本糖尿病協会の活動を通して、糖尿病の正しい知識の普及啓発や糖尿病教育・支援にたずさわる人材育成、糖尿病の重症化を防ぐ地域連携にも精力的に取り組む。